【歌い手】坂田家だから、上から黄色く塗らないで【センラ】

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Aside




お客さんとのやり取りが終わり、無事取引は成立した。

上機嫌に坂田さんの歌ってみたを流しながら営業車を走らせていると、ポケットに入れているスマホが震える。

坂田さんがツイートしたのかな。

ちょっとお腹すいてきたし、と思い近くのコンビニに車を停めると、折原さんからの新着メッセージだった。

こんな時間にどうしたんだろう。

今日の折原さんは会社にいたはず……もう一件回ってくれ、とかいうメールかな。

いろいろと思考しながら開いたメッセージは想像と全然違うものだった。


『今日、会社に戻ってきたあと時間ある？』


突然、どうしたんだろう。

帰ったあと待っている仕事といえば、今日の取引が決定した相手と、その内容について軽くまとめるくらい、だよね。

そんなに楽な仕事ではないけれど、今日中に提出しなければいけないのは簡単な概要をまとめたものだから、詳しいものは明日作ればいい。


『ありますよ。何かありましたか？』


そう返信して、コーヒーとサンドウィッチを選ぶ。

ちょうどお会計を済ませたころ、さっきと同じようにスマホが震える。

画面を開くと折原さんからの返信が届いていて、今がちょうどお昼休憩の時間なのだと気がついた。

折原さんは今日なにたべてるのかなー。


『早めに仕事終わらせるから、よかったら飲みに行かへん？』


なるほど、だから今日空いているかを聞いたんだ。

……この前二人で遊びに行ったのを境に、折原さんとあまり深く関わらないようにしようと思っていたのにな。

でも、せっかくの誘いを断れるわけがない。普通に嬉しい、し。


「こうやって断れないから、ずるずると好きなままなんだよね……」


折原さんへの気持ちに蓋をしよう、気づかないふりをしよう、そう決めたのはどれくらい前のことだったかな。

意識しないようにすることで逆に意識してしまったり、普段通りを演じることでその距離の近さにドギマギしたり。

何をしたって結局折原さんへの好きは消えなかった。

１日中坂田さんのことを考えていたのが嘘みたいに、今は折原さんのことばかり考えている。

とりあえず「行きます」って返信しとこ。


「そうとう黄色く染まっちゃってるな」


そのつぶやきは車のドアを閉める音でかき消された。

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