【歌い手】坂田家だから、上から黄色く塗らないで【センラ】

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センラside





「このあと何したい？」


ポテトを1本ずつ丁寧に口へ運ぶAに、そう聞いた。

映画とかカラオケかなって思っとったけど、Aが行きたいとこあるならそこがいいやろ。


「えーっと……」


Aは困ったように少しだけ眉を下げ、ポテトをつまむ手のスピードを早めた。

数十秒ほど悩み、口を開く。


「カラオケに、行きたいです……折原さんと」


まさかAの口からカラオケ、と言われるだなんて思っていなかったので、正直驚いた。

でもちょうどええわ、座って歌う練習したかったし。


「ええよ、じゃあそれ食べ終わったら行こか」


「はいっ」


残念ながらポテトにつけているケチャップは赤色だけれど、彼女が身に纏う服は黄色だ。

何度目かのその事実の再認識に、本当に黄色を着てくれて嬉しいんだな、と自覚する。

ずっとずっと赤色を身にまとっていた好きな人が、自分の色を身につけている。

それがこんなにも嬉しいことだなんて知らなかった。


二人で返却口のとこにトレーと皿を返し、忘れ物かないか再度チェックをする。

ん、大丈夫やね。じゃあ…

俺は「はい」と言うのと同時にAに手を差し出した。

数秒のあいだ訳が分からなそうに首を傾げた彼女も、すぐにこの手の意味を理解して手を重ねてくれる。

恥ずかしそうにうやうやしく伸ばされたその手をぎゅっと握った。

するとAの肩がピクっと小さく跳ね、それが可愛らしくて思わず微笑んでしまう。

あかんな、Aといると表情筋緩むわ……。


大して言葉も交わさずにカラオケへ向かっていると、沈黙に絶えられなかったAが口を開いた。


「お、折原さん、やっぱりその荷物、私が持ちます」


そういったAの指す荷物というのは、最初に彼女が着ていた服の入った紙袋のこと。

女の子に……しかも好きな子に荷物なんて持たせられへんやろ。


「いーの、これくらい男に持たせとき」


その方がますます、彼氏感出るやん……っていう一言は飲み込んでおいた。

Aは少し不服そうに頷いた。

いつまでも遠慮してくるよなぁ。

もっと俺のこと使ってくれてええのに……ね。

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