44.赤香色 ページ2
[センラside]
「おはようございます〜」
「おー、おはようさん〜」
昨日のことでAも少しは俺を意識してくれるかと思ったけれど、そんなことはなく、いつも通りの挨拶をした。
ただ1ついつも通りじゃなかったことは、Aの羽織っているカーディガンが赤ではなく黄色だということ。
「黄色なんて珍しいやん…どうしたの?」
「最近センラさんにもハマり初めたんです。キャスとか結構行くようになりました」
Aの口から「センラ」という単語が出る度に胸がざわつく。
いつものざわめきは自分の正体がバレたかもしれないという焦りによるものだけれど、今日は違った。
Aがセンラに興味を持つようになってくれたことが、嬉しくて嬉しくて仕方ない。
それなのに、なんだか少し寂しいような、物足りないような気がするのはなんでなんやろ。
センラを好きになっていってくれてるってことが、俺のことも好きになってくれているというわけじゃない。
Aの中でセンラと俺は完全に別人なんやから、そこはノットイコール。
センラは俺だけど、Aにとっては俺じゃなくて、彼女が今惹かれていってくれてるのはセンラで。
……もしかして自分に嫉妬?
うっわ、意味わからん。
そんなんキモいわ。考えるのやめよ。
「突然やね。推し変?」
「いえ、それはないです」
A、俺今めっちゃ傷ついたんやけど。
ついさっき抱えたもやもやが全部吹き飛ぶくらい傷付いたんやけど!!!
答えるまで1秒もかからんかったよ、ほんの少しくらい悩んでくれてもええやん…。
そんなことを口にしてもAを困らせるだけなので、とりあえず「そっかそっか」と笑っておいた。
いつまでも話してはいられないので、のんびりと仕事を始める。
隣からも同じようなタイピング音が聞こえてきたが……何かがいつもと違う。
最近の若者には珍しい素早いタイピング音ではなく、心ここに在らずといったような、ふわふわとした音。
何かあったんかな。
「何かあった?」
声をかけると、Aは驚いたように肩をはね上げた。
「いえ、特に何も無いですよ」
そういった声も少し裏返っており、どう考えても何かあったに違いない。
俺に言えへんことって、何やろ。
か、彼氏でもできたとか…?いやいやA
はガチ恋の坂田家やし、それはありえへんはずや。
………自分で考えといて今の傷付いたなぁ。
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響 - これからも頑張ってください!長文失礼しました。(続きです。初めてこんなにコメント書きました(笑)) (2022年3月2日 17時) (レス) id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
響 - 日替わりのほうで予告を見て読ませていただきました!語彙力ないのでうまく伝えられるかわかりませんが一つ一つのお話がしっかりしていて話の展開も全然急じゃないのに飽きなくてすっごくいい作品でした!個人的には番外編の志麻さんが出てくるお話が好きです(笑) (2022年3月2日 17時) (レス) @page44 id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
坂ちゃん(プロフ) - やばい。すげぇ似てる。私、恋人いるんですけど、坂田家なんです。その上恋人の好きな色は黄色... (2018年12月24日 11時) (レス) id: 2e3d2564c8 (このIDを非表示/違反報告)
せらてゃ - 全て読ませて頂きました!!小説読んでて初めて笑いましたwwおもしろいとこがたくさんあって笑っちゃいましたwもうかわいかったです!!これからも頑張ってください(><) (2018年11月25日 1時) (レス) id: 838c277702 (このIDを非表示/違反報告)
ほわいとふぃっしゅ(プロフ) - つぼみさん» そのように言っていただけて本当に嬉しいです……。少し先になってしまうのですが、坂田さんの短編を書かせて頂きたいなとは思っているので、気長にお待ちください!! (2018年10月29日 18時) (レス) id: b3ad7ee62f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほわいとふぃっしゅ | 作成日時:2018年9月8日 22時