第３章 ベランダでの出来事 ページ21
なんて､濃すぎる一日だったんだ…｡
私は溜め息を吐きながら、
目の前に広がる綺麗な夜景を見下ろす｡
ベランダの柵に寄りかかり頬杖をつくと…
視界の端に嫌なモノが見えた｡
時間は､既に十二時を越えている｡
たぶん､普通の人だったら眠ってる頃だと思う｡
ベランダに出た時に
気がつかなかった訳じゃない｡
それは､この前鼻を掠めた煙草の香り｡
｢そんなに溜め息吐いてたら、幸せ逃げちゃうよ〜｣
｢・・・・・｣
う､うぜぇ〜｡
視界の端で顔を
覗き込んで来る男､相川真冬｡
｢あんまり素直じゃないと、男にモテないよ〜｣
この人､本当に学校の教師なんだろうか？
｢別に男にモテたいなんて思ってません｡｣
｢何でそんなツンケンしてんの?｣
先生は含み笑いをすると、
目の前の夜景に視線を移す｡
｢見ず知らずの彼女に浮気疑惑かけられたり、
失礼な事言われたら誰だって怒りますっ!!｣
ムカついた私は、
横目で睨みながら語尾を強めた｡
｢何だよ｡
せっかく､迷子だったどっかの誰かさんを
昇降口まで送り届けてやったのに〜｣
そんな先生も私を横目で
チラリとこちらを見て反撃してきた｡
｢ちっ､違…｣
否定しようと思ったけど、
全く持って間違っていないので
最後まで否定しきれなかった｡
｢まぁ､でも…そうだよね｡
昨日は本当に悪かったよ｡
あの子には後でちゃんと言っといたから｣
｢・・・・・｣
そう言いながら、
夜景を見下ろす先生の横顔がとても綺麗だった｡
全然怒りはおさまらないけれど、
あまりにも素直に謝られてしまったので
言葉を返せなくなってしまった…｡
｢でも､テレビの音量は
あの子の言うとおり
マジでデカかったんだけどね？｣
んなっ!!
アンタもか!?アンタもなの!?
彼女に、
あんなアンアン言わせてたアンタがそれを言うかっ!?
思わず心の中でヒートアップしてしまった私は…
｢誰のせいだと思ってるんですかっ!?｣
｢・・・・・｣
おっと、口が滑った｡
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