Ep29 ページ29
突然のその言葉に、どすんと心臓を貫かれたような気分になった。
けれど。
「う……ん、うん。好きだよ」
真っ直ぐ仗助くんのほうを見る。
だって、この言葉はほんとうだ。
今ですら、いや──仗助くんと一緒にいるだけで、わたしの心臓はうるさいくらいに高鳴っている。
嬉しさと、緊張と、仗助くんを前にしてこんなにもどきどきしている。
好きだという感情以外のなにものでもないのだから。
「そ………か、おう、そう面と向かって言われちまうと俺も恥ずかしいな……」
仗助くんは残りのカプチーノのをぐいっと飲み干すと、カップをゆっくりと置き直した。
「告白の返事────あのときは断っちまったけど、考え直させてくれ」
「……？それってどういう──」
「いや、……俺にもいろいろ考えるところがあってな……康一や億泰にさんざ言われて困ってんだ。好きとか恋とか俺にはよく分かんねぇしよ──……」
わたしもカップに残っていたコーヒーをゆっくりと飲み干した。
あいかわらず店内にはジャズが流れていて、今のこの雰囲気に妙に合っている。
それがまたわたしの緊張を高まらせるのだった。
「Aが俺を好きだっていうのはよォく分かってる。だから俺に、もうすこしだけ考えさせてくれ」
「──もちろん、それは全然構わないけど……もしかして、この話をするために誘ってくれたの？」
わたしの問いに、仗助くんはこくんと頷いた。
それから慌てて──
「悪い、こんな話をするために付き合わせちまって！けど……どうしてもはっきりさせておくべきかと思ってよ」
「ううん、仗助くんに誘ってもらえて嬉しい。友達としても──こうしてお茶しながら話すのは楽しいから！」
仗助くんと長い間話せていることに変わりはない。
このひとを好きでいる身としても、友達としても、ともかくこうして同じ時を過ごせるのは楽しいし嬉しい。
ふたりでなくとも、康一くんや億泰くん、承太郎さんだって居てもきっとしあわせなのだろう。
仗助くんが言った「考え直させてくれ」とは、一体どういう意味なのだろう。
ポジティブにとらえても良いのだろうか。
彼の心を読めるわけでもなく、わたしはただ悶々とせざるを得なかった。
空になったカップを置いて、わたしたちは店をあとにした。
外はほの暗くなっていて、学校終わりの学生たちが帰宅している。
「さ、帰ろうぜ」
そう言ってとなりを歩く仗助くんの笑顔に、またずぶずぶと嵌っていくような気分だった。
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紫羅那＠お絵描き部(プロフ) - 絵がうますぎる…… ヾ(>ω<ヾﾉ三ヽ^ｼ>ω<)ﾉｼ (2019年5月7日 19時) (
レス) id: 824c90f62e (このIDを非表示/違反報告)
麦(プロフ) - 蜂さん» 蜂さんありがとうございます〜！そう言ってもらえてメチャクチャ励みになります……頑張ります！ (2019年5月3日 21時) (レス) id: f8001bfddc (このIDを非表示/違反報告)
蜂(プロフ) - 更新おつかれさまです！絵も文も好きすぎて！！無理せず頑張ってください！ (2019年5月3日 15時) (レス) id: fb72653bef (このIDを非表示/違反報告)
麦(プロフ) - 庄さんさん» 庄さん ありがとうございます……！！絵のほうも文のほうも頑張りたいと思います！ (2019年5月2日 2時) (レス) id: f8001bfddc (このIDを非表示/違反報告)
庄さん(プロフ) - 絵、上手....!!!もちろん小説の方も最高でいらっしゃる....!! (2019年5月2日 0時) (レス) id: 126b5dc4ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：麦 | 作成日時：2019年4月23日 13時
