先輩の、となり。２

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お参りが終わったから、帰ろうとしたら。

「A？」

声をかけられたから、振り返ると、太輔と美月ちゃんだった。

「ひとりで来たの？」

「うん。先輩は札幌にいて、お兄ちゃんには彼女と行くからって断られた」

美月ちゃんと目が合ったら、笑いかけてくれた。

「この間はありがとう」

あ、カイロのことかな。

「いえいえ。いつでもあげるね」

じゃあね、って手をふる。

「A！」

「何？」

「あ、いや。もうお参りした？まだだったら一緒に」

「もうしたよ。甲子園行けますようにってちゃんとお願いしたから」

「バカ。願いごとって口に出したらかなわないって言うだろ」

「え！うそ！どうしよ、今のなしで！」

「無理だろ」

太輔が笑ってる。

私と太輔のやり取りを聞いていた美月ちゃんが、太輔の袖を引っ張る。

「私がお願いするよ」

「あー…うん。じゃあ行こっか」

二人と別れて歩き出す。

ちらっと振り返ると、太輔と美月ちゃんが顔を寄せ合って何か話している。

お似合いじゃん。


なんだか先輩に会いたくなって、初詣に行ってきましたってラインしたら。

先輩からは、味噌バターコーンラーメンの写真が送られてきた。





新学期。

ぽろりと口に出した私のお願いも神様はちゃんと聞いていてくれた。

選抜の代表校に選ばれた、と高野連から電話があったのだ。

「やったー！」

「甲子園だー！！」

みんな抱きあったり、帽子を投げたりして喜んでいる。

私もマネージャーの先輩と抱きしめあってたら、部員とはしゃいでる太輔と目があった。

「太輔、おめでとう」

「うん」

「ありがとう」

「……うん」

うちの高校がある県は全国でも激戦区だから、無名の公立高校が出られるっていうだけでも、かなりのニュース。

またギャラリーが増えるかな。

しばらく騒がしい日が続きそうだ。

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