先輩の、となり。２

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クリスマスに先輩の家の鍵をもらったけど。

普段は部活があって帰りも遅いし、特に使えそうな時はなかった。


だけど、それは、先輩が心開いてるんだよ、って言ってくれてるみたいで。

すごく嬉しかったから、なんとなくお守りをもらったような気持ちだった。

落としたらダメだし、机の引き出しに大事にしまっとこ。


そろそろ寝ようかな、と思ったら、先輩から電話がかかってきた。

寒いからベッドに入って布団にくるまって電話に出る。

「もしもし」

「もしもしAちゃん？起きてた？」

先輩の優しい声、好きだなあ。

「うん、でももう寝るとこです」

「俺も。もう寝るとこー」

「寒いからあったかくしてくださいね」

「はーい。あ、そだ。あのね、俺んちの両親今仕事で
札幌にいるんだけど。
年末年始はそっちに来いって言われて。
だからしばらく会えないんだ」

そっかあ。

「そうなんですね。ご両親札幌にいらっしゃるんだ」

「いらっしゃるんです」

「行ったことないです、北海道」

「いいとこだよ。景色きれいし、食べもの美味しいし」

北海道の景色思い浮かべたら、眠たくなってきた。


「今度、一緒に行こうね」


意識が途切れる寸前に、先輩の甘い声が聞こえた気がした。





年が明けて三ヶ日は部活も休みだった。

でも先輩は札幌にいるから、特に予定もなく。

ごろごろしながらテレビ見てるお兄ちゃんに声をかけてみる。

「お兄ちゃん初詣行かない？」

「行かない。彼女と明日行くから」

速攻で断られた。

「クリスマスデレながら帰ってきたから、先輩とうまくいってるのかと思ってたら。もう振られたのか」

「振られてません！」

「あ、そ。付き合ってんだ？」

「……まあ」

「へー。だから最近太輔誘っても来ないのか」

「太輔も彼女できたよ」

「え？！聞いてないけど！」

「別にお兄ちゃんに報告する義務ないじゃん」

「そうだけど。へー、青春してんね、若者は」

「お兄ちゃんも彼女コロコロかえてないで、ちょっと落ち着けば」

「俺は真実の愛を探してるんですー」


結局、お兄ちゃんは来てくれなかったからひとりで神社に行く。

今年は初詣、絶対行くって決めてた。

お賽銭を入れて、ぱんぱん、と二回手をたたく。

選抜、甲子園いけますように。

と。

今年も先輩と、一緒にいられますように。


ふたつも欲張りかな。

でもどっちも、かなってほしい。

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