先輩の、となり。

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先輩は、いつもふわふわの髪がはねてて、黄色い自転車に乗ってて、優しいけどよく通る声をしてて、口をおっきく開けて笑う。

「うーん」

「何、どしたの？」

休み時間机につっぷしてうなってる私を、麻美がのぞきこむ。

「玉森先輩情報がアップデートされない……」

「はい？」
「だって1日1玉森先輩は達成できても、だいたい遠くから見てるだけだし」
「まあそうだよね」

「先輩のこと。もっと知りたいなあ」

「そんなの方法は一つしかないでしょ」
「何？何何？」

「連絡先、教えてもらいなよ」

連絡先？

「ラインとか教えてもらえばいろいろ聞けるんじゃない？」

ラインとか？

「麻美！そうする！」

さすが麻美！彼氏と長く付き合ってるだけある！



放課後、部活に行く前に生徒会室に寄ることにした。

山口先輩がいたらまた何か言われちゃうかな。

と、思いながら廊下を曲がったら、生徒会室のドアの前に立っている玉森先輩を見つけた。

「玉森先輩！」

びっくりしたみたいに振り返った先輩が、ひとさし指を唇に当てて、しーってした。

「ちょっと、こっち」

「わ」

先輩が急に私の手を引っ張って生徒会室に背を向けて走り出す。

訳が分からず先輩に引っ張られながら、生徒会室のドアが少し開いていて人影が目に入る。


あれは。

北山先輩と大崎先輩。


2人は、黒板の前で抱き合っていた。


え、え、え。



屋上に続く階段の踊り場まで来ると、先輩が手を離した。

「……見た？」
「あ……はい」
「だよね」
「北山先輩と大崎先輩、付き合ってるんですか？」
「……そう。だけど生徒会室であんなことするのはまずいから、誰にも言わないでくれる？」

私は首をぶんぶん振る。

「言いません、誰にも」

「ありがと」

「そっかあ…うん、でもお似合いですね」

玉森先輩が、うん、って頷いて、ふって息で笑う。

「そういえば、俺に何か用事だった？」

「あ！そうだった！先輩の連絡先が知りたいです。
ラインとか電話とか」

先輩はそんなこと言われると思ってなかったみたいで、目をぱちぱちした。

「やだ」

「え？！」

「だってなんかAちゃん変なスタンプいっぱい送ってきそうだし」
「送りません！1日1回しか」
「送んのかよ」

「ダメかあ……」

「あ！じゃあさ」
「はい！」

「体育祭ってクラス対抗だからさ。
俺のクラスに勝ったら教えたげる」




悔しいけど。


そのちょっと意地悪そうな顔も。




好きです、先輩。

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