先輩の、となり。

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新しい制服にもクラスにも毎日の満員電車にも、なんとなく慣れてきた。

朝は麻美と太輔と待ち合わせしてるわけじゃないけど、だいたい同じ電車に乗ってる。
だけど麻美は今日寝坊のため一本遅い電車だから太輔と2人。

「今日はまた一段と多いね」
「だな」

ぎゅうぎゅう。
ドアぎりぎりのとこに立っていたら、カーブに差し掛かったとこで太輔に壁ドンされるみたいになった。

「……悪い」
「あ…うん、大丈夫」

昔は私の方が背高かったのに。
いつの間にこんな見下ろされるようになったんだっけ。

「あー…のさ。先輩とは結局どうなったわけ？」
「え？玉森先輩？」

この間の初めての先輩との会話を思い出して、思わずにやにや。

「顔。ゆるみすぎ」
「名前呼んでくれて、またねって手振ってくれた」
「……付き合うとか付き合わないとか、そういう話は？」

「つ、付き合う？」


そんなこと考えもしてなかった。
彼女いるかどうかもまだ知らないままだし。

そうか。
告白して両思いになれたら付き合ったり手つないだり
キスしたりするんだ。


え、キス？


玉森先輩と、キス？


無理無理無理無理。


「太輔」
「うん？」
「鼻血出そう」
「おまっ…まじでやめて」


なんとか鼻血は出さずに、学校までたどりつけた。
あぶない。

「じゃーな。部活で」
「うん、あとでね」

太輔と別れてクラスに入ったところで、声をかけられた。


「おはよう。ねえねえ、Aさん」

えーと、確か同じクラスの川上さん。

「おはよう」
「さっきのC組の藤ヶ谷くんだよね？」
「うん？」
「いつも朝一緒だよね？」
「あ、うん家近いから。麻美も」
「どっちか彼女だったりする？」
「え？！しないしない。麻美違う高校に彼氏いるし。
私も…好きな人いるし」

「そうなんだ！あ、ねえねえ、野球部の練習って見に行ってもいいのかな？」

明らかに嬉しそうな顔を見て、いくら恋愛経験があんまりない私でも、太輔のことが好きなのかな、と思った。

中学生の時もけっこうモテてた、そういえば。


「グラウンドの外で見てるのは大丈夫だよ」
「わかった、ありがとう！」

いつの間にか教室に来てた麻美が後ろにいた。

「何？太輔狙い？」
「たぶん」

「Aはさ、太輔に彼女ができたらどう思う？」
「え？どうって」

キーンコーン、とチャイムが鳴る。

「席つけー。出席とるぞ」


そういえば。


太輔モテるけど彼女いたことあったっけ。

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