先輩の、となり。

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「あれ？」

千賀くんが廊下の奥の方で誰かを見つけた。

「あれ、こないだ言ってた如月先輩じゃね？」

あ、読者モデルの…先輩の元カノ？

遠目で見てもきれいな人なのがわかる。
顔ちっさくて色白で髪の毛がくるんくるんて巻かれてる。

「Aー、そろそろ休憩行ってきていいよ。
またすぐカエル着なきゃだから頭だけはずして行ってね」

クラスの子に声かけられた。

頭だけはずして、ぼさぼさの髪の毛を手ぐしで直してると。

「Aちゃん」

マントとキバだけはずした玉森先輩が教室の入り口から顔を出す。

「迎えにきた」

先輩！マントとキバはずしたらますます王子様ですから！

その格好で、迎えにきた、は反則ですよ！

麻美ににやにやしながら背中を押されて、行こうとしたら、先輩の背後に人影。

「裕太！」

さっきの。如月先輩。

うわ、近くで見るとますます顔ちっさくて、ハーフみたいな顔立ち。

「え、かれん？なんでいんの？」

「文化祭なんだから来てもいいでしょ？
裕太連絡しても無視するし全然会ってくれないし」

「……会う必要ないじゃん」

先輩の声静かだけど、ちょっとイライラしてるような。

「行こ、Aちゃん」

「その子？好きな人ができたって言ってたの」

私のことを頭から爪先までじろじろ見る。

ちっさい声で、超ふつーってつぶやいたの聞こえてます。


「関係ないだろ。もう別れたんだから」

「私は別れたくないって言ったし。
今も裕太とやり直したいって思ってる」

「それは無理」

「なんで？その子と付き合ってるの？」

「違うけど」

なんかこの会話、先輩に間接的に振られてるみたいで嫌だ。

先輩が私をちらっと見て続けた。

「……まだ」

え？

「そういうことは本人に言うのが先だから。
かれんに言う必要ない」

え？

え？

行こ、って先輩が私の手をつかんで走り出す。


私はカエルの着ぐるみ着てるし、さっきの玉森先輩の言葉がぐるぐるまわって、足がもつれそうだった。


西校舎の4階は音楽室とか美術室があるから、今日は使われていない。

立ち入り禁止のビニールひもが張られていたけど、先輩がそこをひょいってくぐる。

空き教室の扉を開けたら、からり、と乾いた音がした。


先輩が扉を閉めると、息をついて、私を見た。


手は、さっきからずっと、にぎられたままだった。

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