先輩の、となり。

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それからしばらく、野球部の練習が忙しくなり、帰りが遅くなったこともあって、せっかく先輩にラインを聞いたけどなかなか何も送れずにいた。

今日は久しぶりに練習が早く終わって、ご飯もお風呂も終わって20時過ぎ。

「送ってみようかな……」

スマホとにらめっこ。

変なスタンプ1日1回は送っていいって言ってたけどかわいいのにしとこう。

と思ってたのに、ヤンキーぽい人がキウイを持って
キウイーッスって言ってる変なスタンプを送ってしまった。

あああ、どうしよう。削除ってどうするんだっけ。

あああ！既読になっちゃった！

と、あわあわしてたら、先輩から電話がかかってきてしまった。

「も…もしもし」

「キウイーッス」
「すみませんすみません」
「笑ってくんないと俺がすべってるみたいじゃん」

先輩の声。

電話越しだといつもよりちょっと低い。

「変なスタンプ全然送ってこないなーと思ってた」

「今日も送るつもりじゃなかったんですけど」

「1日1回ならいいよ」

低くてちょっとだけ、甘い。

「先輩、あの。聞きたいことがあるんです」
「ん？何？」

「山口先輩とかクラスの子が言ってたんです。
玉森先輩には他校に彼女がいるって」

「……」

「だからラインしてもいいのか、ちょっと迷ってました」

「えーと。それは……前の彼女。
春休み前に別れたんだけど、いろいろ事情があって。
別れたって誰にも言ってなかったんだ」

事情ってなんだろう。

「そう…なんですか。
じゃあ何で私には言ってくれたんですか」

ちょっと期待してしまいそうになる。

「うん。
Aちゃんにはちゃんと言っとこうと思って。
俺、今彼女いない。けど」

けど？


「好きな人が、いる」



先輩に彼女がいるかもしれないって思ってたから、そんなにショックは受けないと思ってた。

だけど、先輩の口からはっきり聞くと。

やっぱりショックだった。


「……玉森先輩も、片想いなんですか？」

「うん、俺も。片想い。
しかも、たぶん叶わない片想い、かな」


先輩は笑いながら言ってたけど。

少し悲しそうな声だった。


ぎゅうって胸が苦しくなる。




先輩が幸せだといいのに。


誰よりも幸せだといいのに。




先輩を笑顔にできるのが、私だったらいいのに。

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