先輩の、となり。

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玉森先輩がラインはいつでもしていいよって言ってくれたから、変なスタンプは送ってないけど、2、3日に1回くらいは特に用事がなくても何かしら送っていた。


先輩は兄弟いなくて一人っ子。

血液型はB型。

お父さんが転勤族で転校ばっかりしてた。

好きな食べものはオムライス。


ちょっとずつ知ってることが増えていく。


先輩からはあんまり送ってくれないけど、私が送ったらいつもちゃんと返事してくれた。

今日も帰りの電車の中でラインをぽちぽち。

『先輩のアイコンの写真のワンちゃん飼ってるんですか？』

先輩のアイコンはミニチュアダックスの写真。

『この子ね、昔飼ってた。コウメ』

『コウメちゃん。かわいいですね』

『もう5年前くらいにしんじゃったけど。
しんだ時すごく悲しかったから、もう二度と犬は飼わない』

そうかあ。
玉森先輩たくさん泣いたのかな。

頭なでてぎゅうって抱きしめてあげたかったな、なんて思う。





野球部は夏の大会が始まっていた。

太輔は控えピッチャーで出ていて、ベンチに入れるマネージャーは1人なので先輩が入り、私はスタンドで応援した。

1回戦2回戦は無事突破。

今日は3回戦。
去年のベスト4が相手だった。

エースナンバーをつけた先輩が先発。
序盤は投手戦で、先輩もヒット打たれながら0点に抑えている。

3回の裏、2塁にランナーがいるチャンスで太輔に打席がまわってきた。

思わず立ち上がる。

「太輔ー！打てーー！！」

キイン、て金属バットの音が響いて、ボールはレフトの頭上を超えた。

歓声が上がる。タイムリーヒットで1点。


先制点は取ったけど、その後エースの先輩が突然コントロールを乱して逆転された。

太輔は先輩のあとに交代してマウンドに上がって0点に抑えたけど、結局4ー1で負けてしまった。


帰り道、太輔と並んで歩く。

「惜しかったね」
「……悔しい」
「うん……悔しいね」

夕日がいつもよりおっきくて、空が真っ赤だった。

「それにしてもお前の声でけーよ」
「え？そうかな」

「昔から。打席でもマウンドでも、やたら聞こえるんだよな。Aの声」


「応援してるよ、いつでも。いっぱい」

「……次は、負けない」


うん。

負けるな。

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