先輩の、となり。

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翌朝。

太輔にどんな顔すればいいのかわからないまま、玄関を出たら、家の前に太輔が立ってた。

「…はよ」
「お、はよ」
「足は？」
「うん、昨日より腫れも痛みもだいぶまし」
「そっか」

そのまま並んで駅まで歩き始めたけど、沈黙。

「あのさ」

「う、うん？」
「別に何も変わんねーから」
「え？」
「もう急にあんなことしないし」

昨日の太輔の腕の強さを不意に思い出して、顔が赤くなる。

「毎日部活でも顔合わせんだから、普通にして。
俺の気持ちは伝えたけど、今はどうしようもないことわかってるから」

「うん、わかった。
普通にする。普通普通普通…」

普通ってなんだっけ？

私太輔といつも何話してた？

「考えすぎだ、バカ」
「なんか…私今まで太輔にひどいことしてなかったかな」
「ひどいこと？」
「怪我してる時散々一緒にいてもらって」

「あのなあ」

「だって」

「余計なこと考えるなよ。
逆だったらお前も同じことしただろ」
「う…ん」
「もうすぐ夏の大会始まるし、お前が変だと困る。
まあいつも変だけど」
「変じゃないし！」

気まずくならないようにしてくれてるんだな。

そうだもうすぐ地方大会。

太輔だって集中したいはず。

私が普通にすることがきっと一番いいんだ。




麻美が、おはよーって後ろから走ってくる。

麻美が来てからはいつもと同じ感じで学校まで行けた、と思う。



学校に着いたら。

「ちょっと来て」


山口先輩にまた裏庭に連れて行かれた。2回目。

あ、あれだ。
きっと昨日の玉森先輩と一緒に帰ったやつ。

「確認なんだけど、あんた玉森くんと何もないわよね？」
「な、ないですよ。
昨日はちょっと足怪我して。
玉森先輩が病院まで送ってくれただけです」

「ふーん。まあ玉森くんには彼女いるし。
あんたなんか相手にされるわけないんだけど」

「山口先輩って玉森先輩のこと好きなんですか？」

急に山口先輩の顔が赤くなる。

「ち、違うわよ。まあほら生徒会役員で仲いいから」
「なんだ、違うんですか？」

「…違わないわよ！好きよ！ずっと片想いよ！」

「え！じゃあ一緒じゃないですか！」

「何嬉しそうにしてんのよ」
「だって玉森先輩かっこいいしかわいいし、優しいけどけっこう男らしいし好きになっちゃいますよ」
「そうそう、そうなの！」

なんか分かり合えてしまった。


そのあと、山口先輩がうまく言ってくれたのかわからないけど、玉森先輩と変に噂になったりしなかった。

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