先輩の、となり。

19. ページ19

帰ってきたらくたくたで。
晩ご飯も珍しくほとんど食べられなかった。

自分の部屋に戻ってベッドにぼすって倒れ込む。

あ、そうだ。
太輔に連絡しとかなきゃ。

ラインの画面を開く。

『足、ただの捻挫だったよ』
『お兄ちゃんに連絡してくれて、ありがとう』

太輔からは、おう、と一言だけ返ってきた。


今日の保健室でのことを、何か言った方がよかったのかもしれないけど、何を言えばいいのかわからないからそのまま画面を閉じる。

太輔も何も言ってこなかった。

明日の朝、太輔いつもと同じ電車かな。

たぶんそう。
太輔は避けて時間変えたりしない。

私もちゃんといつもと同じ時間に家出よう。




それから、先輩にもらったルーズリーフの切れ端に書いてあったIDを検索してみた。

すぐに玉森裕太、って名前が出てきて、どきっとする。

アイコンは犬の写真だった。
先輩犬飼ってるのかな。

友達に追加して、かわいいクマがお辞儀してるスタンプをとりあえず送ってみた。

わ、すぐ、既読になってる。

『Aです。今日はありがとうございました』

またすぐ既読になった。

『足痛くない？』


先輩優しい。

大丈夫です、って返して、彼女がいる噂のこと聞いてみようかと思ったのだけど。
　
もうなんだか今日はいろんなことが起こりすぎたから、また今度にしようと思った。

もうすでにキャパオーバーだよ。



本当にめまぐるしい一日だった。


目を閉じたら、先輩に頭ぽんってされた手の感触とか。
肘のあたりにつかまらせてもらったら意外に腕がたくましかったこととか。
先輩の自転車から見た景色とか。

いろんなものがふわふわ浮かんで、それを追いかけてるうちにぐっすり眠ってた。

20.→←18.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す