センラくんを困らせたい

８.夏祭り ページ9

「なんでこうなったの？」



「いやぁ……クラスの女子に誘われたんやけど行きたくなくて断ったら……」



「勝手に行けばいいのに……」



「あれ、酷ない？」



私は今浴衣を着て騒がしい人混みの中センラくんと歩いている



……何気に浴衣が似合っていて腹が立つ



「あ、りんご飴……」



「食べたいん？」



「うん」



でも、人多いよな、流石に急にわがまま言えば困るよね



「ん、ちょっと待っといてな」



そう言ってベンチに座らされる



え、え、と状況が掴めないものの、動くわけにもいかず



そのままそこにいれば



「お姉さん、ひとり？」



「違いますけど」



「えー、でも今誰もいないじゃん？」



「……今いないだけです」



めんどくさいくらい絡まれる



うんざりしながら振りほどこうとすれば



「すいません、俺の連れなんで」



聞きなれない声が聞こえる



振り向けば背が低めの茶髪



……イケメン、ってやつ



「彼氏連れかよ……チッ」



あからさまな舌打ちをして何処かへと消えていった



「大丈夫？」



「あ、はい、大丈夫です」



「そっか、気をつけてね」



茶髪の人もそのまま人混みに紛れて消えてしまう



「Aちゃん？」



「……わ、センラくん、びっくりした」



不思議そうな顔をしてこっちを見るセンラくん

手にはりんご飴



「ありがとう」



「どーいたしまして」



不思議な出会いもあるものだ

９.紹介→←７.偽物

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す