蝉とけい‥みんなしわわせ。(ymxin)蝉シリーズ(５)

＝すりすり・３＝ ページ12

「・・ぁぁ・・いいんだ。
　もぅ・・いいんだよ・・ねこ＿＿。」


「よくないよっ。なぁ・・リョウ。
　なぁ・・。」



もう声も発せず黙ってオレを見ている

リョウに・・オレは・・

オレは、リョウに

笑顔に元気になって・・もらいたい・・。




「なぁ、リョウ。
　あのな、よかったらオレんち、来いよ、な？
　だって・・だってさ＿＿＿。」


こんな事言ったら・・リョウが悲しむ・・

でも＿＿＿＿＿。


「だって、だってさ・・ここに居ても
　ジーさんは・・か、帰って来ないんだ・・。
　な？・・だ、だから＿＿＿＿＿。」



あの物静かなリョウが

悲しい悲しい声で遠吠えした＿＿＿＿。



体の真ん中が、ぎゅぅぅっと締め付けられて

オレは苦しくて、苦しくて＿＿＿。



「リョウ・・・。」



リョウは我慢していた涙を

ポロポロと零して言うんだ。


「信じられない＿＿＿＿。信じたくないんだ・・。
　親父さんは・・親父さんはオレを置いて行ったり
　しないんだよ・・。オレは待たなければ・・
　親父さんの事・・ここで待つんだ・・オレは。」


「リョウッ。
　ジーさんは、もう居ないんだっっ。
　・・なぁ・・リョウ、オレんち来いよ。
　なぁっ・・リョウッッ。」



リョウは、犬小屋の中で

もっともっと大きな体を縮こませて

震える体で噎(むせ)び泣きながら

小さな小さな声で言うんだ。


「信じられない・・信じたくない。
　そんな事・・言わないでくれ＿＿＿＿＿。」




オレは丸まって縮こまったリョウの背中に

力強く声を掛けた。

「オレ、また来るから・・。
　絶対、リョウを１人にさせないから＿＿＿。」





＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿




オレは、リョウの家からの帰り道

リョウが１人でもオレんちに来れる様に

オレの匂いをたくさん付けた。



大きな犬でも安全にオレの家に来れる

経路に・・塀に、電柱に、自販機に

ありとあらゆるオレの家までの道に



すりすり。すりすり。


白い毛が黒くなるまで

色んな所に、すりすりと頭を擦って


すりすり。すりすり。



体を擦って・・

オレは匂いを残したんだ＿＿＿＿＿＿。





リョウに笑顔を・・

笑顔をもう一度・・。



絶対、１人にさせないから・・なぁ、リョウ。

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