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素早い動きで腹部めがけて蹴りを入れられたのはその直後だった。


高位の貴族が持つ桁外れな身体能力は遥かにフェリドのものを凌駕するが、本気の蹴りを入れられたのはこれが初めてだった。
全く目で追えない動き。


流石におちょくり過ぎたかと反省するのが普通の思考回路だろうが、彼は普通から遥かに逸脱した存在である。


故に悪びれてすらいない。


上手く受け流せず、無様に床に転がった所でAが馬乗りになる。
なんたる絶景だろうか。


普段温厚な彼女の目は吊り上がり怒りが滲んでいるものの、フェリドはこの状況が楽しくて仕方がない。


ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべていると、胸ぐらを掴まれた。




「そろそろ殺すべきかしら」

「これから上手くやろうって時にビジネスパートナーを殺しちゃだめだよぉ」

「ふぅん」




少しクセのあるブロンドが肩から流れ落ちた。


少し乱れた髪も魅力的で、手を伸ばして指に絡めて遊びたいが、勿論彼女はそれを許してくれなどしない。


想像した通りに伸ばしかけた腕を床に縫い止められ、密かな興奮が沸く。


単純ではない彼女がフェリドの手のひらで踊る瞬間はとても気持ちの良いものだ。




「あなたのやり口がいちいち気に食わないわ」

「あんなに必死に、従順に、僕の血を飲んで可愛かったのにー」




そう言うとフェリドは困ったという風に形の良い眉を下げた。


こんな彼女の扱いももう馴れてしまった。
扱いにくいようにみえて、存外、彼女は流され易く落ちやすい。


少し水を向けてやれば簡単に罠に嵌まる。




「あは、ちょっと僕やり過ぎちゃったねぇ」

「そうよ」

「ごめんねぇAちゃん。可愛い子は苛めたい主義なんだ」




ここぞという時に一歩引くのが肝心だ。
そうすれば頑ななAが綻ぶ。


その瞬間が狙い目。




「なら、私と同じ目にあって反省しなさい」

「…へ?」




予想外の返しだ。
ある種の意趣返しだろうか。


彼女は胸ぐらを掴んで無理矢理に起こしているフェリドの首を都合の良いように向きを変え、一気に噛みついた。


決してAの体内の血が足りないわけでもないのに、凄まじい勢いで体内の血液が欠乏していくのが分かる。


フェリドは吸血から伴う快感にどこか熱っぽい息を吐き出した。


もう少し血が無くなると意識が遠のいて行くかもしれない。
その前にと夢中で血を飲むAの髪を手指に絡めてくしゃりと乱れさせた。

17→←17.疑惑の第二位始祖



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なな - 更新頑張ってください!フエリドと夢主の甘い関係が好きです。 (2021年12月27日 22時) (レス) @page23 id: 0c7821053f (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - shiroさん» コメありがとうございます!力関係が逆なのに振り回されちゃう主人公可愛いですよね…。もともとはフェリドに振り回されてほしいと思って書き始めたお話なのでその点を褒めて頂けて嬉しいです。まだまだ今後もスローペースで続きますがよろしくお願いいたします! (2020年10月24日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
shiro - 夢主ちゃんがフェリドに仕えたり、人間だったりする小説は沢山読みましたが、夢主ちゃんの立場がフェリドより上という設定が今まで見たことないものですごく好きです!立場が上のはずなのにフェリドに流されちゃう夢主ちゃんが可愛いです。更新楽しみにしています! (2020年10月23日 4時) (レス) id: 33dd7ff75e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年9月18日 13時

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