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12. お手! ページ1

よく分からない雑誌というものから犬の躾の中に芸というものがあることを知ったA。


何かの機会に試してみようと頭の片隅に置いていた知識だったが、これはいい機会かもしれないと思った。




いつものようにフェリドのおふざけを上手くかわしながら過ごしていたが、渇いたと喚き始め、ついでに子供の血を飲ませろと要望する彼に代わり、貯蔵庫まで血を取りに来た。


彼女をここまで案内した下働きの吸血鬼が姿を消すと、なんで私がと一人ごちる。


広く整頓された貯蔵庫の瓶を眺めながら、人間の血には欲を感じない自身に少しだけ嫌気が差した。


吸血鬼の血しか体が受け付けないAは吸血鬼になった当初からずっとそのような体質だったと言う訳ではない。


彼女は後天的に血が飲めなくなった。
吸血鬼になった当初から数百年間だけは他の吸血鬼と同じように人間の血を飲んでいた。


それがある出来事を切っ掛けに口に入れることすら叶わなくなった。


血が飲めなくなって以降は心配性な兄の元で、吸血鬼の世界の表には顔を出さずひっそりと静かに淡々と暇をもて余すように暮らした。


ウルドにとっては間違いなく吸血鬼の中では異質な存在である彼女を大切に守り庇護せざるを得ないほどの衝撃的な出来事であったことは言うまでもない。




「人間の血の良し悪しなんて忘れた私に取ってこいって言うのが悪いのよ」




血を飲めなくなった呪われた過去を回想しながらも手近なものを手に取り、適当なものをこれと決め、そそくさと貯蔵庫を去った。





フェリドが待つ部屋に戻るとだらんとしていた頭を起こして嬉しそうに顔を向けてきた。


早速と言わんばかりに手を伸ばしたフェリドの手から血が注がれている瓶を逃がし、彼の手が空を掴む。




「…あれ〜?Aちゃん?」

「私は良いと言ってないわ」




意地悪だなんて人聞きの悪いことをしようとしているんじゃない。
ただ試したい事があるだけだ。
それが意地の悪いことに該当するかは知らないが。




「人間の飼うペットはご飯を得るために芸をするらしいじゃない」

「…………」

「ほら」




瓶を持っていない方の手を差し出してきたAに彼は何をすべきかわからずとりあえず片手を乗せる。


それが正解だったらしく、彼女の形のいい唇はたちまち弧を描いた。


そしてフェリドの外ハネをする前髪を撫で付けるように頭に置いた手を往復させ、頭を撫でたのだった。
果たして無事に食事へありつけるのだろうか。

13. 血に、キスに、酔う→



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なな - 更新頑張ってください!フエリドと夢主の甘い関係が好きです。 (2021年12月27日 22時) (レス) @page23 id: 0c7821053f (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - shiroさん» コメありがとうございます!力関係が逆なのに振り回されちゃう主人公可愛いですよね…。もともとはフェリドに振り回されてほしいと思って書き始めたお話なのでその点を褒めて頂けて嬉しいです。まだまだ今後もスローペースで続きますがよろしくお願いいたします! (2020年10月24日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
shiro - 夢主ちゃんがフェリドに仕えたり、人間だったりする小説は沢山読みましたが、夢主ちゃんの立場がフェリドより上という設定が今まで見たことないものですごく好きです!立場が上のはずなのにフェリドに流されちゃう夢主ちゃんが可愛いです。更新楽しみにしています! (2020年10月23日 4時) (レス) id: 33dd7ff75e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年9月18日 13時

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