13話 ページ17
no-side
マレウス「………A」
男の呼び掛けに、少女はゆっくりと顔を向ける。
未だ溢れる涙は男の頬を伝い、雫となって落ちていく。
『あなたは………っ!』
少女の透き通った声が短く言葉を発するのとほぼ同時に、少女の体は男の腕に包まれる。
耳元で、男の震えた息遣いがする。
マレウス「A…A……!」
『……』
自分よりも何倍も大きな体に抱きしめられ、固まる。
マレウス「ずっと、君に会いたかった…」
男の胸元に顔を埋める少女は、ドクン…ドクンと伝わる鼓動の速さに驚く。
そして少女は感じた。
自分の身体の冷たさを……
困惑している様子の少女の頬を撫で、男は愛おしそうに眺めた。
マレウス「あの頃と変わらず…美しいな」
少女は黙って、男の瞳を見つめている。
マレウス「すまない。長い間、待たせてしまった」
男は少し頬を赤らめ、小さな手を握り微笑む。
マレウス「さぁ帰ろう。今度こそ、2人で__」
『…誰?』
マレウス「………え」
男の声を遮り、少女は問う。
マレウス「今、何て…?」
その言葉に、男の体は動かなくなる。
『あなたは誰なの?』
今度ははっきりと、少女の言葉を聞き取る。
男の見開かれた瞳が揺れた。
『Aって誰のこと?私の名前?』
『どこへ行くの?』
『分からない…何も分からないの…』
少女の困惑は一層深まり、今にも泣き出しそうな顔で男に言う。
マレウス「A、落ち着いて」
男が伸ばした手が振り払われ、握られた手はするりと離れていく。
『や、やめて…』
それは、何も持たない少女の精一杯の防御。だが男からすれば、痛恨の一撃だった。
マレウス「そんな…」
酷くショックを受けたような嘆きに、少女はまた困惑する。
マレウス「まさか……
『…記憶?』
マレウス「あぁ…なんてことだ」
男が頭を抱え俯くと、ゴオオオ…と空の低い唸り声が響く。空気がピリピリと弾けるような感覚に、少女は鳥肌が立った。
黒く厚い雲が、あっという間に星空を埋めた。
マレウス「……あぁ、そうか…いや、大丈夫だ」
男は顔を上げ、怯える少女に手を差し伸べる。
マレウス「安心していい。僕は君の味方だ」
『…あなたは私を知っているの?』
マレウス「勿論、なぜなら僕は……」
マレウス「“僕たち”は____________」
1558人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Rin(プロフ) - 続きが楽しみです 更新頑張って下さい (2023年4月20日 2時) (レス) id: a3128229fd (このIDを非表示/違反報告)
出雲(元あやりん) - 若様ァァァ!若様と誓いしていたなんて。おっし若様、アタシと結婚しまs((若様好きすぎて暴走してしまった。すk(((殴。すいません面白いですし、好きです (2021年10月22日 21時) (レス) @page21 id: afcb507146 (このIDを非表示/違反報告)
三月アリス - めっちゃ好きです!マレウス様かわいい! (2020年9月7日 10時) (レス) id: 742f423e47 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 続き気になります。更新頑張ってください (2020年9月3日 17時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
ベル(プロフ) - え?めっちゃ好きです!!更新楽しみに待ってます! (2020年8月20日 17時) (レス) id: 61644e4b7a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:毘張 | 作成日時:2020年7月30日 1時