続・ようこそ！！青蘭高校へ！！ 【 ２２ 】

葛藤と出逢い ページ46

◆ 太輔・side ◆

しゅん… として下を向いてしまったA。


おじさんとのケンカ… 余程 俺に言いたくなかったんだな…


「でも… お前は向き合った」
チラリと俺を見た。

「… 話すまで… 一ヶ月もかかったけどね」
一ヶ月…


マグを両手で握りしめていた。


「お父さんにね… あんなに言われたの初めてだったの… 」

「お前は俺の娘だけど、継いでもらおうと思ってないって… 私… カチンってきて 売り言葉に買い言葉で… 」


どんどんケンカになったんだな…


「『向き合った』って聴こえはいいけど… 葛藤があった」
うん…

「どんなにお父さんと同じ材料を使っても… 真似て作っても何かが違うの… 」
え…


ぽろぽろと零れだした涙。


「… お父さんとは何かが違う… 全然違うの… 」

「悔しくて頑張ったんだけど… 出来なくて… 料理するのが怖くなってきて… 」


A…


「家にいられなくなった… 勉強も何も手につかなくなった」

「自分が何がしたいのかわからなくなった… 」


カタッ…


ゆっくり横に座った。


「… 太輔に… こんな話をしても喜ばないって… どんどん悪い方へ悪い方へ考えちゃったの… 」
肩を優しく抱いた。

「うん… それで？」
零れる涙も手で拭ってやった。


鼻をすすりながら頷いた。


「大学サボって… 公園でね… ぼ〜っと空を見てたの」
近所の？


「飛行機雲があったの… あ〜、この空の下に太輔がいるんだなぁって思ったら… 」

「会いたかった… すごく… 太輔に会いたかった… でも、会えない… 」


飛行機雲を見て… 泣いてたんだな。


「空を見る日が何日間か続いたの… 」

「何日そうしてたかわからないんだけど… ある日、知らない男の人に名前を呼ばれた」


え？


「最初は 誰だか わからなかった… でも、その人は 私のこと知ってた」
まさか… その人…

「久利生さん？」
Aが頷いた。


これが久利生さんとの出逢い…


「先生ね… ラーメンおごってくれたの」
え… ？

「ら… ラーメン？？」
フレンチのシェフが…


ラーメン…


「日本のラーメンが一番なんだって… 」
そうなんだ…

「って！お前、知らない男についていったのか！？」
ぽかんとしてるA。


頭イタイ…


「まったく… 久利生さんだったから良かったけど… 」

「先生のこと思い出したの。あ、この人、有名人だって」


あ…


そうだ…


彼は、ミシュラン 三ツ星シェフだ。

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