続・ようこそ！！青蘭高校へ！！ 【 ２２ 】

娘の味、父の味 ページ47

◆ 太輔・side ◆

彼が有名人で良かった…


ほっとしたが有名人だからって… ついて行くか？普通…


「先生ね… 何も聴かなかった」

「その代わり、２人でラーメンの分析したの… それがすごく楽しくて面白くて… 」


なぜだろう… ２人の楽しそうな光景が目に浮かぶ。

肉の部位を当てた時のように味を分析していたに違いない。


「次の日、先生の働いていたお店に呼ばれた」
え…


「仕込みの欠員が出たから手伝って言われた」

「先生も一緒に手伝って… ３日、先生のこと見てた」


涙が止まり真剣な瞳になった。


「綺麗で繊細な指だった… 先生が食材を触るとね、なんか… 輝いて見れるの」
へぇ〜…

「お父さんと同じ… 音を奏でてるみたいだった」
音…


料理の音。

リズミカルで美味しい音だな。


「先生は… 短い時間でいろいろ教えてくれた」

「お父さんの味は目と舌で盗まなくていけないんだけど、先生は丁寧に教えてくれた」


嬉しそうな顔…

余程、楽しかったに違いない。


「… 料理の楽しさ 思い出した？」
頷いたA。

「まかないをね… 作ったの」
まかない…


従業員が食べる食事のこと。


「皆、美味しいって言ってくれた」

「先生も美味しいって」


え…


また涙…


「どうした？」
慌てて零れ落ちた涙を拭いた。

「… 先生が… お父さんの味だって… 」
え…

「さすが娘だなって… 」
A…


俺は、ゆっくり抱きしめた。


「お世辞だってわかってる… でも、すごく嬉しかったの」
うん…

「お父さんに近づきたかったの… 」
うん…


おじさんが一番だもんな。


「だから… 先生にフランスに来ないかって言われた時、お父さんに近づけるんじゃないかって思った」

「お父さんに認められたら… 側に… あの大好きな店にいられるんじゃないかって… 」


だから…


「だから フランスに行こうと思ったの」
そうだったのか…

「向き合ったな」
俺の胸で頷いた。


背中にある手が俺を抱きしめる。


「お父さんに話をした」

「怒られたけど… 最後にはお父さん… 折れた」


折れたんだんだ… 甘いなおじさん。

さすが娘溺愛の父親。


「とりあえず１年、モノにならなければ諦めろって言われた」


おじさん厳しいな。


「… でも、こんなことになって… 不安になった」


Aが俺の胸に切なくつぶやいた。

相変わらずの癖→←葛藤と出逢い

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す