夢野久作 ページ46
耳を弄ぶざわめきが懐かしい。
今年初の雪がちらつく中、せわしなく動きを止めない人々は生気を放っていて、思わずソロリと手が人形を探した。
しかし、指が触れたのは僕よりも少し大きな、だけども華奢な手だった。
眉を上げ、自分の隣を歩くAを見上げる。
彼女は僕の手をしっかと掴み直して笑みを見せた。
「Qちゃん、ダーメ。お人形は帰ってからね?」
頬を膨らませて不機嫌を露わにすれば、Aは今度は声を上げて笑った。
何がそんなに可笑しいのか。
問うても笑いで躱されるに違いない。
「なら、早く帰りたい」
「フフ、もう帰っちゃうの?」
言外に、戻っても″お人形遊び″はさせないと言われているような気がした。
解っている。
自分に自由に生きていい許しなど何処にもないということは。
それでも、我が儘に生きたって良い筈だ。
雪のせいか冷たいAの手を引き寄せて、薄い皮膚の下、青く血管が見える内手首に己の唇を押し当てる。
去り際には浮き出た骨をなぞるように舌を動かす。
「知ってる?手首へのキスの意味」
「ね、やっぱり早く帰ろう。次は君の好きなとこにするから」
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久作「君の『好き』をちょーだい?」
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青鯖ぷりん - 久ちゃぁぁん…高評価するぅぅ‥! (10月17日 21時) (レス) @page11 id: 496914e067 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - だざいさぁぁんさいこぉ! (10月8日 6時) (レス) @page5 id: dfae0f9c2a (このIDを非表示/違反報告)
ゆかりん - フランシスさんすこ (9月15日 22時) (レス) @page23 id: 5c0b36b6f1 (このIDを非表示/違反報告)
猫助 - 最高です! (8月16日 23時) (レス) @page4 id: 0088b760fa (このIDを非表示/違反報告)
千羽鶴 - 梶井さーん!ドSなとこも好き!違うバージョン梶井さんも見たい (6月18日 23時) (レス) @page15 id: ecb3ef0346 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:久田 螺々亜 | 作成日時:2016年4月8日 21時