決着 ページ21
考え込む間にも、虎は迫ってくる。
「夜叉、頼むよ」
伝わる同意。
自分の動きを『鉛夜叉』に任せて、自分自身は作戦を練ろう。
異能には異能。
…………手っ取り早いのは芥川さんを呼ぶことなんだけど。
それじゃあ私の立場無くなるじゃあないか。
「───!!」
「ちっ!」
虎の前足が私の腕をかすった。
僅かに飛び散る赤。
「全くもうー怪我したくなかったのにー」
…………仕方ないなぁ。
「───『鉛夜叉』、<黒鉛>」
一瞬で纏う雰囲気を変えたAに、ゾクリと背筋が凍った。
…………《銀姫》の名は伊達じゃない。
そう思えるほどの変質ぶり。
鏡花は二者の戦闘を見つめる視線を強くした。
今まではどちらかというと、力と技のぶつかり合いだった。
勿論、敦が力で、Aが技。
…………あの動き、中原さん譲りだ。
アレンジされているところもあるが、ベースは組織一を誇る中原の体術だろう。
それに異能の力が加わって。
「…………!」
そら恐ろしいものを感じた。
それが、今は、
「『裂けろ裂けろ裂けろ。割れろ割れろ割れろ』」
異能の力に任せた一方的な攻撃。
だが、媒体を通すためなのか 、虎に対しては大した傷になっていない。
「『裂けず割れずの獣には、通しの力を加えましょう』」
そして高く跳躍。
何をするのかと半ば呆然と見ていれば、Aが持つナイフが一気に8になった。
「真逆…………!」
「『悪い仔は動いちゃ駄目ですよ』」
Aの指の間に挟まれたナイフは、まるで長い爪のように見えて。
宙で逆立ち状態のAは、背後に異形を従えてニコリと笑った。
ヒュンッ。
鋭い風切り音を立てて、8本ものナイフが『鉛夜叉』の力をそのまま伝えて虎に突き刺さる。
「───!!!!」
今日一番の吠え声。
その声が収まる頃には、敦は元の姿に戻っていた。
「…………!」
はっ、と慌てて彼に駆け寄る。
と。
「動かないでね」
いつの間にか間を詰めていたAに牽制された。
ナイフこそ出していないものの、その圧倒的な雰囲気が、身体を動かすのを躊躇わせる。
「『鉛夜叉』、お疲れ様」
Aが背後に向かって声をかけると、鉛色の異形はさあっと溶けるように消えた。
残るのは笑顔のA。
彼女はもういつもの雰囲気で、
「さ、彼寝ちゃったし、帰ろ」
姐さんも心配してるよー。
「…………」
伸ばされた手をとるには、まだ恐怖が抜けていなかった。
189人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ワンコンコン - 面白いダス (2019年7月21日 0時) (レス) id: ad92a05ced (このIDを非表示/違反報告)
きみぺ - すごく面白いです!!!更新頑張って下さい!!!めっちゃ応援してます(≧∇≦) (2016年8月8日 21時) (レス) id: f3497d4bfc (このIDを非表示/違反報告)
うちを - 太宰さん!太宰さんお願い致します!何とぞよろしくお願い申し上げますっ! (2016年6月12日 22時) (レス) id: 67f1d4205b (このIDを非表示/違反報告)
久田 螺々亜(プロフ) - 真衣さん» コメントありがとうございます。わ、わかりました……!ご期待を沿えるよう努力致します! (2016年6月1日 23時) (レス) id: a7a03e9879 (このIDを非表示/違反報告)
真衣(プロフ) - 中也オチを頼みます。 (2016年6月1日 20時) (レス) id: f1da17ec5d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:久田 螺々亜 | 作成日時:2015年6月27日 21時