鶴が七十一人 ページ23
鍛刀部屋の襖を勢いよく開けると、そこには黒く、ボロボロになっている鶴丸がうつ伏せになっていた
私は衝撃が強すぎて声が出ない
1歩ずつゆっくりと鶴丸に近づく
『……国永？』
名前を呼んでも反応がない
本体を見るとかなりヒビが入っていた
『ねぇ、返事してよ……！』
肩を軽く揺すっても反応はない
私は鶴丸の体を仰向けにした
その時に何か液体のようなものがべとっと手についた
暗くてよくわからないけど、これは多分鶴丸の血だと思う
『待たせて、ごめんね』
私は鶴丸から本体を離し、呪詛の札を剥がし、代わりに私が持ってきた手入れ札をいっぱい貼った
それだけじゃ多分足りない
自分の霊力も直接流す
「……う、……ゲホッ！」
突然鶴丸がむせて、血を吐いた
私が顔を覗き込むと、うっすら目を開けていた
「お前……なに、してる……？」
『何って、分かるでしょ
手入れよ』
鶴丸の言い方、私が誰だか分からないみたい
それでも私は淡々と答え、全快するまで続けようとした
それなのに、鶴丸は私の手を掴んだ
「誰だか、知ら、ないけど……やめるんだ」
『……私が分からないの？』
今、すごく悲しい
忘れられてるのはこの札のせいなのか、それともただ気づいていないだけなのか
「人間なんて、みんな嫌いだ…」
吐き捨てるように言った鶴丸の瞳はとても悲しい色をしていた
そこまで傷つけてしまったんだね
ごめんね、鶴丸
『“鶴丸国永”私はあなたの事が大好き』
そう、たとえあなたが私のことを覚えていなくても
言葉だけじゃ伝わらない
それなら行動で示すしかない
そう思って私がとった行動はひとつ
私は自分の唇を、拗ねたように閉じている鶴丸の唇に重ねた
「…っ！？」
鶴丸は正面で驚いている
私は、ただ気づいて欲しかった
私は鶴丸が大好きだって
重ねた唇をゆっくりと離し、私は涙を流した
『私の事、本当にわからないの？
……鶴じいっ！！』
一度溢れた思いは止まらずに、頬を伝う涙になって溢れ出てきた
涙を拭いながら、嗚咽を漏らしていると私じゃない手が涙を拭った
驚いて顔を上げると、苦笑している鶴丸が瞳に映った
＿＿＿＿
「……A、だよな？」
久々に大切な人から名前を呼ばれた
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夷空斗(プロフ) - 蒼い薔薇さん» コメントありがとうございます！なんとか完結させることが出来ました！この話を読んでいただきありがとうございます！！ (2018年9月29日 19時) (
レス) id: 607aafe4eb (このIDを非表示/違反報告)
蒼い薔薇(プロフ) - 完結おめでとうございます！最後の展開には、ウルっと涙腺が緩んでしまいました！この小説を読んで鶴丸がもっっと好きになってしまいました。本当に最高の作品でした。 (2018年9月29日 0時) (レス) id: ac233dda56 (このIDを非表示/違反報告)
紗衣(プロフ) - 私もいつもコメントを返していただけて嬉しいです！コメントを通して作品の励みにしていただけて、お話できて良かったです！次作を書かれるのならばすごく楽しみです！こちらこそこの作品に出会わせていただいてありがとうございます！ (2018年9月17日 22時) (レス) id: 7d9698e044 (このIDを非表示/違反報告)
夷空斗(プロフ) - 紗衣さん» 紗衣さん、いつもコメントありがとうございます！本当に励まされました！素晴らしい作品と言っていただき、本当に嬉しいです！！最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます！ (2018年9月17日 22時) (レス) id: 607aafe4eb (このIDを非表示/違反報告)
紗衣(プロフ) - 毎日この話を読むためにこのサイトを開いて更新を楽しみにしていました。完結したのだと知って涙が止まりません…本当に素晴らしい作品でした…。夢主ちゃんと鶴丸が向こうの世界で幸せになってくれればと思います。完結おめでとうございます！この作品が大好きです！！ (2018年9月17日 21時) (レス) id: 7d9698e044 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夷空斗 | 作成日時：2018年9月2日 0時
