鶴が五十人 ページ2
三年生に上がり、新しい教室にもなれ始めた
本丸でも桜がちょうど満開で、みんなでお花見できたらいいと話しが進んでいる
あの日から、鶴丸は帰ってこなかった
もう一ヶ月は経つというのに
鶴丸から貰った手甲は毎日つけている
ピンだって髪につけている
『はぁ…』
教室の中だというのを忘れ、私は盛大なため息をついた
「やっぱりまだ帰ってこない?」
『あ、神琴
まだ帰ってきてない…』
鈴木さんと佐藤くんも、私の鶴丸を一緒に探してくれている
どこの時間に飛ばされたのかも分からないしそもそも、連れていかれたってことは、ここの時代に居るかもしれない
「やっぱりダメだA
姫華さんも繋がらないよ」
攫われたって聞いてからすぐに刀澤さんに連絡をしたけど繋がらない
私の考え、黒は刀澤さんだと思う
あんなに最初の頃は優しくしてくれた、政府を信じるなとも言ってくれた
最初から、私を油断させるためだったのかもしれない
でもそうしたら何で鶴丸を連れていったのか
私が入院していた時も、攫う隙はあったはず
なぜ時間遡行軍と共にいるのか
分からないことが多すぎる
「おい、A
俺の三日月が見つけたんだと、お前のとこのだろ?」
購買から戻ってきた佐藤くんはそう言って私に紙袋を渡してくれた
視線で“何これ?”って訴えると“開けてみろ”って言われた
紙袋の中に手を入れると、なにか柔らかい布のようなものが手に触れた
取り出してみると、少し擦り切れた鶴丸の羽織だった
それには赤い糸がある
『これ、どこで…?』
声が震える、少しでも手がかりが見つかって嬉しいのに、この衣を見ると鶴丸が折れてしまったんじゃないかって不安になる
「1285年11月常陸国(ひたちのくに)で見つけたそうだ」
その時代は、私が鶴丸たち第一部隊を出陣させた場所だ
報告を聞くと、何故か時間遡行軍が安達氏の墓を掘り起こそうとしていたらしい
それを止めようと戦っていたところ、異形な遡行軍が現れて鶴丸を連れ去ったそうだ
私は佐藤くんから貰った衣を抱きしめて顔を上げた
『ありがとう、見つけてくれて
三日月さんにもお礼を伝えておいて』
「おう、またなんかあったら教えるわ」
そう言って頭をポンと撫でて自分の席に戻っていった
その手から優しさが伝わってきて、また涙が滲んできた
涙を隠すように衣に顔をうずめた
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夷空斗(プロフ) - 蒼い薔薇さん» コメントありがとうございます!なんとか完結させることが出来ました!この話を読んでいただきありがとうございます!! (2018年9月29日 19時) (レス) id: 607aafe4eb (このIDを非表示/違反報告)
蒼い薔薇(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後の展開には、ウルっと涙腺が緩んでしまいました!この小説を読んで鶴丸がもっっと好きになってしまいました。本当に最高の作品でした。 (2018年9月29日 0時) (レス) id: ac233dda56 (このIDを非表示/違反報告)
紗衣(プロフ) - 私もいつもコメントを返していただけて嬉しいです!コメントを通して作品の励みにしていただけて、お話できて良かったです!次作を書かれるのならばすごく楽しみです!こちらこそこの作品に出会わせていただいてありがとうございます! (2018年9月17日 22時) (レス) id: 7d9698e044 (このIDを非表示/違反報告)
夷空斗(プロフ) - 紗衣さん» 紗衣さん、いつもコメントありがとうございます!本当に励まされました!素晴らしい作品と言っていただき、本当に嬉しいです!!最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます! (2018年9月17日 22時) (レス) id: 607aafe4eb (このIDを非表示/違反報告)
紗衣(プロフ) - 毎日この話を読むためにこのサイトを開いて更新を楽しみにしていました。完結したのだと知って涙が止まりません…本当に素晴らしい作品でした…。夢主ちゃんと鶴丸が向こうの世界で幸せになってくれればと思います。完結おめでとうございます!この作品が大好きです!! (2018年9月17日 21時) (レス) id: 7d9698e044 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夷空斗 | 作成日時:2018年9月2日 0時