【最強メガシンカ】世界でいちばん頑張っている君に 〜〜11th Spa〜〜【ポケモンXY特別編】

知らない ページ18

「なぜそう言い切れる」

将来のことは誰にも分からない。ゴジカさんやAのような特別な人は例外だが。

「キリナちゃんは僕に恋愛感情を抱いてないからさ。今までも、これからも」

どこか遠くを見ているような、ぼんやりした表情で答えた。

「だからなぜそう思う」

俺が訊き直すと、彼は険しい目つきで俺を見つめた。

「君は何もわかってないね」

鋭い刃物で体を真っ二つに斬られたような衝撃が走った。

反論しようとするが、俺より先に彼が啖呵を切った。

「君は、興味のあることはとことん突き詰める性格だ。大いに結構。素晴らしいと思うよ。
だけど興味のないことはバッサリ切り捨てるんだ。そうだろう？
だからキリナちゃんのことを知らないんだ。だからキリナちゃんは関係ないと言い切れたんだ。
だから後ろめたさを感じることなく僕に訊けるんだ。
彼女がどれほど君のために苦しんできたか、君は知らないから」

彼の目は攻撃的だった。完全に俺を責める目だった。

「待てよ、話が理解できない。
キリナが俺のために苦しんだって、どういうことだ？」

「……君のそういうところが、彼女を傷つけているんだよ……っ！」

彼は俺から目をそむけ、タオルを片手に早々に脱衣所に向かった。
ふと見た彼の横顔は「憤怒」と呼ぶに相応しかった。


真冬にバケツ水を思いっきり頭からぶっかけられたような気分だった。

訳の分からないことで苦しまれて、訳の分からないことでキレられて……。
一体俺が何をしたっていうんだ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

随分時間が経って、のぼせそうになる直前で湯から出た。

「あ、アラン。遅かったですね」

扇風機の前で解いた髪をなびかせている少女。
浴衣と不釣り合いな小さな体。

「まあな……。
キリナとダイゴさんは？」

辺りを見渡しても人影は俺とAの二つだけ。

「先に出て行っちゃいましたよ。
ダイゴさん、ホントすぐに出て行っちゃって。キリナお姉ちゃんもダイゴさんについていっちゃいました。
なんかダイゴさん、怒ってるみたいでしたけど……。アラン、なんか変なこと言いました？」

彼女は何も知らない。その方がいいだろう。

「別に。俺にもよくわからない」

「そうですか……」

Aが俯いた拍子で、扇風機に彼女の髪が巻き込まれそうになった。

慌てて巻き込まれそうになった髪を自分の方に引き寄せている彼女を微笑み交じりに見て、体に付いた水滴をタオルで拭き取り、浴衣を着る。

謝らないでください→←今日くらい

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す