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「綸榭はなんで狙われてるの?」
一番の疑問はそこだった。さっきまで一緒にエイリアンから逃げていた仲だったのに、急に殺し合う仲になるなんて。
「アタシが仕事でハズレ引いちゃったんよ」
綸榭は神威から聞いた話を説明する。それを聞いて、Aは納得した。それと同時に、奇妙な感覚になった。
──なんだろう。誰かが夜兎同士を戦わせたがっているようにも感じる。
根拠があるかと問われれば上手く説明できない。しかし、タイミングが出来すぎているような気がするのだ。
「ねぇ綸榭、その仕事を依頼してきた人と連絡取れる?」
「連絡先なら知ってるよ」
そう言って携帯から依頼者へ発信する。が、電話をかけることは適わなかった。電子音声で『この電話番号は、現在使われておりません』というアナウンスのみが流れた。昨日依頼されたばかりだというのに。
その様子を見て、Aは自分の感覚が正しいのだと考える。
「いよいよ胡散臭くなってきたね。神威も綸榭も、誰かに嵌められてるのかもしれない」
「アタシ達を嵌めて、誰が得するんだろねぇ」
「夜兎同士を戦わせて、消耗させたい人がいるのかな。何かしらの漁夫の利を狙ってるような」
「漁夫の利か〜。どっちかに恨みがある人の仕業か、夜兎の死体漁りが趣味な人でもいるんかね」
「怨恨なら、恨んでる方を確実に仕留めるやり方を選ぶはず。どっちかが消耗するまで、みたいな回りくどい方法とるかな」
「確かにね。アタシ達が戦うようにわざと構成員を殺すように依頼するんじゃなくて、もっと直接的な方法があるはずだよねぇ」
「ねぇ綸榭、ターゲットは依頼者のセクハラ上司なんだよね。ということは、二人とも同じ会社だった。もしかしたら、その会社に何か手がかりがあるかもしれない。従業員の個人情報も保管されてるだろうし」
「A、あったまイイ! ポケットに会社の住所メモがあったはず……これだ。ここから近くにあるみたい」
「じゃあ行こうか」
目的地が決まった女子二人は人目を忍んで会社へ向かう。これから不法侵入して個人情報を盗むのだ。見られる訳にはいかない。それに、神威達に見つかると困る。
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作者名:夢宵桜 | 作者ホームページ:https://lit.link/dreamfairy
作成日時:2024年3月25日 21時