セカンド

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その夜も甘い夜を過ごした
甘い甘いとろけるような夜
人生で一番幸せな誕生日だった
藤ヶ谷さんの腕に抱かれて幸せで
不謹慎だけどこのまま死んでしまいたいとさえ思ってしまったぐらい


･･･本当にこの日が一番幸せな日だったとこれから俺は思い知らされることとなる


そこから藤ヶ谷さんからの連絡は減っていき
一週間に一度は来てくれていたのも二週間に一度･･･三週間に一度、一ヶ月に一度となっていった。



それも、約束をしてではなく
"今日行くね"と変わらず突然で


優先されてないことを突きつけられる
逢いたいとは言えない
我慢できず一度だけ言った時に"忙しくて･･･ごめん"と断られたから
忙しい…嘘ではないかもしれない
それでも、少しでも逢いたい。


変わらず美容院へは通っている



それしか逢うことの約束がないから



藤ヶ谷さんにとって
俺は一番じゃないし、
二番でもないかもしれないし
三番目でさえも難しいかもしれないけど...


それでもいいって思えるのは
藤ヶ谷さんが幸せを教えてくれたから。



藤ヶ谷さん以外はもう無理だよ。


藤ヶ谷さんが教えてくれた幸せはたくさんある。


例えば愛する幸せ。


作った料理を美味しいと食べてくれる幸せ。
ただ二人でテレビを見て笑い合う幸せ。
二人で風呂に入る幸せ。
身体を合わせる幸せ。



外出は二人で一度しかしたことないから
出かけるデートはあまりないけど...


それでも、ただ二人で過ごす幸せを教えてくれた。


何処かに行くことが重要なんじゃなくて
誰といるかが重要。



全部教えてくれた。



そんな時見たんだ。
偶然に
会社帰りに美容院の前を通って
美容院の駐車場の脇に止まっていた車の中で
二人がキスをしていたのをー･･･
藤ヶ谷さんと彼女が、暗闇で唇を合わせていた


こんな現場、わかってても
見たくなかった…。


藤ヶ谷さん？
太輔･･･？


何処で俺…


間違えた？


はじめから出逢わなきゃよかった？
はじめから諦めればよかった？
はじめから求めなければよかった？


こんな想いをするぐらいなら
始まらなきゃ良かった？


二番目すらなれていないかも知れないなら
確信がないなら
虚しいだけなら

出逢わなければよかった？



幸せを知ってしまった以上、後には戻れない。


それでも、ひとつだけ願いが叶うなら…


太輔と出逢う前に戻りたい



あの幸せを知らない自分へと戻りたい



「･･･虚しい、だけか」


誰の一番にもなれない自分が大っ嫌いだった

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