219 ページ20
夕方、のんちゃんとゲームをしていると
テーブルに置いたスマホが震えた
画面には睦月からのメッセージ
"私、ちゃんと言ったよ"
それに返信をしていると
新しい通知が来た
それはしげからのものだった
"今から、防波堤来て"
睦月も、のんちゃんもしっかり話したのだ
それなら次は私達の番
"しっかり振られた"
という睦月からのメッセージに既読をつけ
のんちゃんの「行ってこい」という言葉で
私は玄関を出た
防波堤に着けば
そこにはすでにしげが座っていた
彼の隣に座り
自然と繋がれる左手
「睦月と話した」
「うん」
「やから、俺も話すわ」
そう言うと
彼は防波堤の上で胡座をかき
こちらに体を向けた
私もそれと向き合うように座り直す
「俺の話、睦月から聞いたよな」
「うん」
「それ聞いて、どう思った」
その答えは簡単だった
昨日睦月から話を聞いた時
素直に思ったことがあったんだ
「しげのこともっと好きになった
自分のせいだって責め続けて
誰にも迷惑かけないように過ごしてたのは
しげの優しさだったから」
「お前、それ反則やからな」
そういうと、彼は私を抱き寄せる
耳に吐息がかかる
「あの子はな、俺が来ないから探してくれたんよ
いつもあの崖におったから
その日も居ると思ったんやろうな
いつも俺と行ってたあの崖に
1人で行った
そこで足を滑らして海に落ちてしまった」
彼がぽつぽつと話す言葉を必死に聞き取る
何かあればすぐあの崖に行ってしまう彼は
きっとその子の背中をずっと見つめていたんだ
「誰も、あの子の親も
俺のことは責めんかった
やけどな、責めて欲しかったんよ
お前のせいやって、全部俺に背負わせて欲しかったんよ
みんなからの優しさが、いつのまにか同情に感じるようになってた」
そう言って体を離せば
ずっと見えなかった彼の瞳が見えた
そこには、あの時の冷たさや暗さはほとんどないようだった
「せやけどな、Aと出会って
一緒に過ごすようになって
独りってほんまに孤独なんやなって
みんなといることって楽しいんやなって気づいたんよ
やから俺、もう逃げないって決めたわ
それが誰かを傷つけても
誰かに傷つけられることになっても
それを全部受け止めて前向いて生きてくって
お前がおったからそう思えるようになった」
そう言った彼は最後に「ありがとう」と言って
もう一度私を抱き寄せた
彼の瞳に
もう暗闇はなかった
この先の未来をしっかりと見据えて
キラキラと輝いていた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 174人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょぽん(プロフ) - 作品夢中になって読んでしまいました。すごくドキドキして、本当に面白かったです。 (2018年11月7日 17時) (
レス) id: 15a580132a (このIDを非表示/違反報告)
しょあ(プロフ) - はじめまして。とても素敵なお話で感動しました！ (2018年11月1日 2時) (レス) id: a32bcb43cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - はじめまして！長編完結まで一気読みしてしまいました。島の風景がはっきり想像できるような情景描写や、主人公達の細やかな心理描写に胸が打たれました。AnotherStory楽しみにしています！！ (2018年10月27日 19時) (レス) id: ed4a5c8a01 (このIDを非表示/違反報告)
yuu(プロフ) - 長くなりましたが、こんなにも素晴らしい作品を読むことが出来て、公開して頂けて嬉しいです！長文失礼致しました。 (2018年10月27日 7時) (レス) id: 1250a32edd (このIDを非表示/違反報告)
yuu(プロフ) - 是非とも実写で見たいと思う思わせてくれる作品だと思いました。クリアに想像できる風景。こちらがお話に引きずり込まれるような描写。本当に言葉が出てこないほど素敵な作品です。言葉にするのが難しいですが、今までサイトや本を読んだ中で一番の作品です。 (2018年10月27日 7時) (レス) id: 1250a32edd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：民 | 作成日時：2018年10月24日 17時
