青い夏 四章

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「ねえ、しげ
私の話も聞いてくれる？」

「え、いや、無理に話さんでも」

「ううん
ちゃんと聞いて欲しいの」

私の言葉に頷けば
彼は腕を離しもう一度向き合う


目を瞑り
一つ一つ思い出す

どこから話そうか
なかなか考えがまとまらず
結局最初から話すことにした


「2年前、私は全てを失ったの」


2年前の10月5日

普段仕事ばかりでほとんど家にいない両親が
久しぶりの休みに3人で出かけようと言い出した

ただ近くのショッピングモールに行くだけだったけど
私はそれがものすごく嬉しくて
前日の夜から浮かれてなかなか寝付けずにいた


朝、普段はしっかりと起きれる私は
珍しく母の声によって目を覚ました

予定より1時間遅れてしまったけど
2人はそれを咎めたりはしなかった


今でも思う
もしこの時、私がもっと早く起きれていたら

あの事故は起きなかったかもしれなかったと


ショッピングモールに着き、3人で楽しく買い物をしていた
普段こうして出かけることがなかった私は
2人に手を引いてもらい
その手をずっと離さなかった

2人も楽しそうに笑い
また来ようね、といつかの約束をしたことを覚えている


久しぶりに3人で過ごした時間は
この時が最後だった


帰りの車内、この前夢で見たのと同じ会話を交わす
バックミラーに写る父の目は
くしゃっと笑っていた

次の瞬間
父の声とともに強い衝撃が体に伝わった


目を開けば、ペシャンコになった車と
それに押しつぶされ力つきる両親が見えた

何も声は出ない
先ほど感じた体の痛みも
麻痺したように何も感じなくなっていた


周りからの悲鳴が大音量で聞こえる

車内には
私だけの鼓動が響いていた


次に目を覚ますと
白に統一された空間で横たわっていた

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