壱.ゆるりと舞う胡蝶蘭 ページ3
｢黒蝶様。本日の任務が終了致しんした｣
私の直属の部下がそうして頭を下げる。
白衣に緋袴を───所謂、巫女服を身に纏っている姿に見合った頭の下げ方だった。
流石は私の部下、と言うべきだろうか。その姿に一切の狂いはなく、非常に端麗であった。
本日の任務、と言うのは私達が統制する地方と時代の鬼の出没情報を纏め、出没情報があればその地に出向いて悪鬼を狩るということ。
だが今日は出没情報もなかったので私が今日のことを纏めてそれで終わりだ。
｢分かりんした。今日はもう下がりなんし｣
｢あい｣
廓言葉。
過去に遊女が存在した時代にそう言われていた言葉を、花魁でない、悪鬼を滅殺する私達が使っている。
遊女が存在した時代に廓言葉が使われていた理由は｢出身地や、その訛りを隠すため｣であった。
私たちもそれは同じ。
悪鬼達は私達人間を常に狙っていて自らが見つけた獲物を捕らえるために出身地まで追いかけてその親族を皆喰らってしまうというケースも珍しくない。
そのため、私達は廓言葉を使わなければならない。
───というが。
本当は悪鬼を殲滅する私たちが純粋に廓言葉を使い、雅に振る舞わなければいけないから。
本質はそこだと思う。
誰が決めたのかは知らないがそう決まっていることなので私は逆らうつもりもなければ、その廓言葉に対しては不満を抱くこともない。
｢あ、黒蝶様｣
｢何？｣
｢今夜、遊郭に行こうと思うていんすが、黒蝶様はどうされますかぇ？｣
｢わっちは遠慮しておきんす。お主らで行ってきなんし｣
｢いや、黒蝶様も行きんしょう。仕事詰めでお身体が心配でありんす｣
私がいくら言っても食い下がらない部下にうぅん、と頭を唸らせる。
私だって彼女たちと一緒に休息を取りたいとも思ったが、生憎私はこの後用事がある。
その用事も言える筈もなく、困ったものだ。
｢わっちの身体にはどうも遊郭のあの空気が合いんせん。やから、皆で行ってきなんし。それぐらいの代金はわっちが負担致しんしょう｣
｢ほんに言うてありんすか！？｣
ほんに言うてるから、行ってきなんし。そう笑いながら告げると、部下が楽しそうに笑ってありがとうございんす！と思いっきり頭を下げる。
私は部下の笑顔が嬉しくて、彼女の頭を撫でてやると行ってきます！と私の部屋を飛び出して、仲間たちに知らせに行った。
｢……さて、私も行こうかなぁ｣
そうして衣装を脱ぎ、また別の衣装に着替える。
私も、あの遊郭に出向かなければ。
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - この作品好きです！続き楽しみに待ってます！ (2022年3月9日 2時) (
レス) @page40 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
露(プロフ) - すごく好きです…いままでこういう系統の作品や生々しい部分に触れるものは読んでこなかったんですけど、設定や世界観がすごく凝っていて引き込まれてしまいました…！更新、楽しみにしています！ (2022年2月19日 9時) (レス) id: ecc7bc2fb7 (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - 緋鞠さん» 廓言葉褒めて貰えて嬉しいです（；；）本当に有難いです（；；）めちゃめちゃ嬉しいです本当にありがとうございます！ (2020年4月5日 1時) (レス) id: 7dc015f2ad (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - 呉羽さん» コメントありがとうございます。更新頑張ります！本当にありがとうございます！ (2020年4月5日 1時) (レス) id: 7dc015f2ad (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - ルイさん» 世界観に拘ったのでそう言ってくださって凄くうれしいです、ありがとうございます！ (2020年4月5日 1時) (レス) id: 7dc015f2ad (このIDを非表示/違反報告)
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