◎ ページ13
｢……どう言うつもりで此方にいらしたんかぇ？｣
｢千羅に話を聞いた。あの日、遊郭を救ってくれたのは黒蝶隊長であること、千羅と黒蝶隊長が話してた、ってこと｣
｢それで、何故此方にいらしたんか…わっちには分かりんせん｣
相変わらず堅いなぁ〜！？と笑いながら肩に乗るたぬきを一撫で。
堅い、と言うか私が一般市民の命を守って行動するのは当たり前のことなのだから、そう言う風にわざわざ足を運んでまで礼を言いに来る人間なんて存在したことが無かった。
｢遊郭の近くで、しかも俺らの道中で鬼が出るなんて一回も無かった。だからあの時、周りの人間も死ぬんじゃないか、って考えたんだよ｣
｢そんなことは致しんせん。わっちが全ての命を守りんす｣
｢だろうな。悪鬼が出た、って知らせの時、誰よりも行動が速かった。本当に、あの時遊郭を救ってくれて感謝してる｣
そんなことないんだよなぁ……と心の中でぼやきながらも彼の話を淡々と聞く。
確かに、浦島坂田船花魁が花魁道中をする日に、悪鬼が出たと言う情報を耳にすることは無かった。
遠くの地方で出没する、なんてことは有り得ても、遊郭周辺で悪鬼が出没するのは今までに無いことだった。
｢わざわざその為に…ありがとうございんす。今後、わっちら黒蝶隊が遊郭の警備を強めて行こうと思うておりんす。わっちらが救って見せんしょう｣
｢…一つ、聞きたいんだけど、隊員の命は誰が守ってんの？｣
｢基本は自分で自分の命を守うていんすが…わっちが責任を持って、彼女達を守っていんす｣
｢だよなぁ。じゃあ、お前の命は誰が守ってくれてんの？｣
え、と言葉に詰まった。
私を守ってくれる人……。
私を守ってくれる人なんて居なかった。
今は亡き両親が守ってくれはいたものの、両親共に謎の失踪を遂げてしまっている。
両親が失踪してしまったのも、私がまだ黒蝶隊に入隊するよりも前のことなので守ってくれる人なんて居ないのと同じだった。
私が黒蝶隊に入隊した時は、入隊と同時に隊長になっていた。
前には母親が隊長になっていたその跡を継ぐようにして、私が隊長へと。
｢…わっちは……わっちは、一人で十分自分の身は守りんす。誰かに守って貰おうなど思うてありんせん｣
｢……動かねば闇にへだつや花と水｣
｢…え？｣
確か、かの有名な沖田総司が詠んだ句。
｢戦わないと、お前と一緒には居られないんだな。つまり、戦っていないとお前のことを護れない｣
彼の言っていることが全く分からなかった。
訳も分からず、彼は悲しそうに笑って私を見つめた。
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ちょこ - この作品好きです！続き楽しみに待ってます！ (2022年3月9日 2時) (
レス) @page40 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
露(プロフ) - すごく好きです…いままでこういう系統の作品や生々しい部分に触れるものは読んでこなかったんですけど、設定や世界観がすごく凝っていて引き込まれてしまいました…！更新、楽しみにしています！ (2022年2月19日 9時) (レス) id: ecc7bc2fb7 (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - 緋鞠さん» 廓言葉褒めて貰えて嬉しいです（；；）本当に有難いです（；；）めちゃめちゃ嬉しいです本当にありがとうございます！ (2020年4月5日 1時) (レス) id: 7dc015f2ad (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - 呉羽さん» コメントありがとうございます。更新頑張ります！本当にありがとうございます！ (2020年4月5日 1時) (レス) id: 7dc015f2ad (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - ルイさん» 世界観に拘ったのでそう言ってくださって凄くうれしいです、ありがとうございます！ (2020年4月5日 1時) (レス) id: 7dc015f2ad (このIDを非表示/違反報告)
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