聖夜 8 ページ22
か細い声で、反戦論を呟いた。
「おい軍医」
不意に呼ばれて、目だけを向ける。味方の軍人達が、彼を取り囲む。
ゲオルグ「堪忍袋の尾が切れたのか...」
ニヤリと微笑みながら、彼は言った。
ゲオルグ「ここで俺を殺したとて、何の利益が得られるか分かっているようだな。目障りで耳障りな僕が消えて、清々するんだろう」
「よく、分かっているじゃねぇか...」
ゲオルグ「当たり前だ。連れて来られてから...。ここにぶち込まれた時から、あらゆる覚悟は出来ている。実験台にされる事も、殺される事も、死地に捨て置かれる事だってな」
そこまでを言うと、座り方を崩した。
ゲオルグ「感染症の諸症状はとっくに熟知している。まぁ、あの軍人感化軍医が何とかしてくれるだろう」
タラサ「モーリェ...」
写真立てに入れられた、写真を見つめる。まだ赤子の、愛娘。この世界の残酷さを知らない、無邪気な顔を浮かべて笑っている。その小さな天使を抱き締める、父親である自分。信頼出来るベビーシッターに預けて、ここに来てから数ヶ月。恋しくて堪らない。
タラサ「必ず、生きて帰る。良い子にして、待っていてくれ」
彼は、決意の込もった声で言った。前に言われた事が思い出される。
ゲオルグ「貴方には、遠くにいる女がいるんだろう」
問いかけられて、身構える。
ゲオルグ「簡単な事だ。指輪をはめている事から、既に既婚者だと分かったし、ニコチンの微香で、貴方は喫煙者だと判明した。女と言っても、妻じゃない。娘だろう?」
何がきっかけで分かってしまったのだろう。
つい怒鳴ってしまった。
タラサ「敵の分際ででしゃばるな‼」
ゲオルグ「...目は口ほどに物を言う、ですよ」
不意に、真面目な顔になった。今まで見た事がないその表情に、驚きを隠せない。
ゲオルグ「僕は地元住民の為に、こっそり治療に当たっていた衛生兵を知っている。その青年は僕のいた軍に捕らえられたが、彼さえも馬鹿にしているのですか?心が動かされましたよ。無関係な人を助ける者がいたなんて。こんな異常な状況下の最中、人道主義を忘れなかった彼の行為は、一騎当千の猛将より尊ばれます」
あの時は、両者共に何も言わなかった。沈黙に耐えきれず、自分は出て行った。今やるべき事は、被害の食い止めだ。
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ルツ(プロフ) - レジスタンスさん» 本当に恐ろしい話でした（笑） (2017年12月15日 12時) (
レス) id: 62681feacb (このIDを非表示/違反報告)
レジスタンス(プロフ) - うわあ、でもケルマの言葉をよく見れば気づけるんですよねえ……恐ろしい(笑) (2017年12月15日 12時) (レス) id: 2d55fe83e4 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ(プロフ) - レジスタンスさん» ふおお...お厳しいご意見、確かに私でも、新聞記者のイレックスに次いで、殺し屋には彼は向いてないと思わざるを得ないと、時々思っているのです。色んな意味で、優しさが捨てる事が出来ないみたいで;^_^A (2017年12月11日 17時) (レス) id: 62681feacb (このIDを非表示/違反報告)
レジスタンス(プロフ) - まあ、政府の為とは言え彼がしてきたのは立派な殺人であり、娘がその事で色々言われるのは当然の事で、娘に発覚する事を恐れているようではタラサに殺し屋になど到底向かない……と思ってしまいました(´･ω･｀) (2017年12月11日 16時) (レス) id: 2d55fe83e4 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ(プロフ) - レジスタンスさん» ありがとうございます！（＾ω＾） (2017年12月8日 15時) (レス) id: 62681feacb (このIDを非表示/違反報告)
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