冥府の悪霊達 30 ページ30
母の元へ来ると、彼女はとっくに振り向いていた。
パーシアス「行くんだよな...。まだずっとここにいるんだよな」
「ええ、折角逢えたのに...」
まだ話したかった。まだ抱き締めたかった。
けれど、その願いは叶えてもずっと続くわけではない。それは分かっていても。
「本当に、ごめんなさい...。貴方が魔獣の血を引いていようが、悪魔の血が流れてようが...貴方は私の自慢の息子だって、胸を張って言えば良かったわ。どんな子供だろうと、親は愛さなきゃいけないのに...。本当に酷い親だったわ」
パーシアス「酷かねぇよ!」
少年の声は、何かを我慢しているかのように震えている。
パーシアス「俺は、昔も今も『あの時の』母さんは大嫌いだ。でも...こんな世界で、俺の事を思っていたんなら...ずっと謝りたかったって知ったら、どうしてそれを否定すんだよ⁉」
幼い子供に戻ったように、パーシアスは涙を流した。
パーシアス「それに、親からひでぇ事されたガキ達が、親をどう思っているか分かんねぇけどよ...。少なくとも俺は...あん時泣いて謝った母さんを...また抱き締めてくれた母さんを...」
母は、また抱いた。これが、最後の抱擁だった。
「こんな母さんで、ごめんね。ありがとう...」
いつまでもこうしていたい。埋め合わせたい。
静かに、息子から離れた。
「...最後に、頼みを聴いてくれる?」
母は、そっと悲しげな笑みを浮かべて言った。
何が言いたいのか、解った。涙を無理矢理拭うと、少年らしい笑顔で返す。
パーシアス「親父と妹の事だろ。心配すんなよ。ぜってぇ悲しませたりしねぇって。そんで、代わりに『ごめんなさい』を伝えとくぜ」
それを聞き届けた彼女は、微笑んだ。
「ありがとう、パーシアス...」
そして、背を向けた。
「もう、母さんは行くね。さようなら...」
役人達に紛れた母は、彼等と共に向こうへ消えていく。
パーシアス「母さん!」
パーシアスは叫んだ。
パーシアス「また、逢えるよな!またこの世界で!また、母さんの子供として生まれ変わっても!」
母は顔だけをこちらに向けて、頷いて笑った。
別れを告げた親子。後には、少年の嗚咽の声だけが響いていた。
シュネル「...戻ろう」
パーシアス「...ああ」
裁判官と共に、2人は待ち人の元へ向かった。
1人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - 新藤息吹さん» ありがとうございます!アンテをもしやるとしたら、ずっと平和ルートばっかすると思います(笑)フラウィー戦もヒーローアンダイン戦もやりたい気持ちはありますが、やりたくないです(笑) (2018年11月17日 21時) (レス) id: 62681feacb (このIDを非表示/違反報告)
新藤息吹(プロフ) - 面白かったです!見事にUndertaleにハマりましたね… (2018年11月17日 20時) (レス) id: 4a72550ddd (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - すぐ終わるかもしれない話です(笑)一応、ホラーチックな(?)ストーリーになります。 (2018年11月14日 22時) (レス) id: 62681feacb (このIDを非表示/違反報告)
新藤息吹(プロフ) - 面白かったです!体を温めてゆっくり休んでくださいね! (2018年10月26日 18時) (レス) id: 4a72550ddd (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - 訳ありまして、私ルツは...『ルツ・ヒューイット』というペンネームに変えます。呼び方はこれまで通り『ルツ』で大丈夫です! (2018年10月13日 18時) (レス) id: 62681feacb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ