HTF小話集と短編集！！そのⅤ (ページ45)

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赤いドレスのシンデレラ 10 ページ45

フレイキー「ああああああああああああああああああああああああ‼」

全ての感情が決壊した彼女は叫びました。叫び続けました。手当たり次第に触れた物を投げつけ蹴りつけました。手に血がにじみ出ても暴れました。最初から彼女達が苦しんでいたなら、どうして気が付かなかったのか。あの時2人を疑っていなかったら。あの時ドレスを届かなかったら。演技だと見抜いていたら。あの時パーティーへ行って2人の無実を証明していたら。
仕事場がごちゃごちゃになり、のどがかすれても叫んでいたフレイキーは膝から崩れ落ち、やがて滂沱の涙を流しました。かすれた声で今度は泣き続けました。ギグルスとペチュニアはもういない。どんな思いで亡くなったのだろう。どうして神はあの2人を悪魔の元へ行かせたのか。声に出ない絶望が雫となって流れ出ました。泣き疲れたフレイキーは言いました。

フレイキー「あああ...僕、死にたいよ...」

今すぐ死んで、2人の元へ行きたい。でも、あの悪魔を生かしていいのでしょうか。彼女が生きている限り、このような悲劇がまた生まれるかもしれません。
誰も信じてくれない、助けてくれない世界で、フレイキーは立ち上がりました。床に散らばった針を手にしました。月光に煌めく針に、フレイキーの覚悟の眼差しが映りました。

フレイキー「ダメだ...。ウェディングドレスを作るまで死ぬわけにはいかない。魔法使いは、シンデレラを更なる幸せに誘うんだ」

それからというもの、フレイキーは屋敷に与えられた仕事場で、ほとんど篭ってドレス作りに励みました。食べもせず寝る時間を削って、針を動かしました。上手くいかなくなって苛立っても手を休みませんでした。清純で健気な彼女に相応しい、最上級の生地に最上級の飾り、最上級の模様を織り込みます。やがて城の遣いがやって来ました。

クロマモ「今日が結婚式だけれど」

フレイキー「ええ、ウェディングドレスが出来ました。ラミー様を連れて行きますので、お城でお待ち下さいね」

遣いが離れていくとラミーにひざまずき、フレイキーは厳かに言いました。ラミーは、陶酔にも似た感情で喜んでいるようでした。

フレイキー「素晴らしいドレスです。僕がありったけの心血を注いだ最高傑作です。お気に召されたようで光栄です。さぁ、行きましょう」

そう言って手を引きました。