HTF小話集と短編集！！そのⅤ (ページ29)

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相続の紛薬、または愚者の毒ページ29

俺はディスコ・ベアー。金持ちのディスコダンサーだ。
元々家が素封家だったから、俺には相当な遺産が相続された。勿論、ダンサーとしての仕事も沢山やったから、財産と同じ位かなり稼いだ。ただ、不満がある。もっと金が欲しい。
好きなだけ豪遊もしたいし、自己満足としてもっと金が欲しい。
そうは思ったが上手くいかない。金にがめつい親族は、自分の遺産を譲りたがらないよな。
少しでもいいから、こっちに分配してくれないもんかねぇ?
だが馬鹿な真似すりゃ、発覚して破滅だ。

ディスコ「いや、確実に俺の方に回ってくる算段があったな...」

計画を練りに練って、俺は実行に移した。

それから数ヵ月後、俺はある報せを受けた。
俺の親族の何人かが、ヒ素を飲んで死んだと。
最初はジサツだと思われたみてぇだったが、近くに住む挙動不審の男が、殺人犯として逮捕されたそうだ。その男は自分はやってねぇって自供しているが、次々と動かしようのない証拠がいくつも挙げられている。これは有罪確実だな。それぞれの葬式の後、弁護士数人が俺にこう持ちかけた。

「実は遺書がございまして、貴方に多額の遺産を相続するとありまして...」

「こちらもそうです。近々貴方にお譲りすると...」

「この遺産も、これからは貴方の物になりまして...」

ディスコ「そうですか...。俺に譲られるならば、受け取りましょう」

俺はうっかり口元をほころばせぬよう、神経を張り詰めた。一瞬でも疑われたら、全てが水泡に帰すからな。独りきりになるまで演技をしなければ。
これで、一生遊んで暮らせる以上の金が手に入った。綿密に立ててきた計画が、無事に成功した。あの濡れ衣を着せられた男には、本当に感謝している。
本当は俺が殺していたなんて、誰も疑いはしねぇ。俺が虚偽の遺書を作成していたなんて、誰も思いはしない。そしてその男が確実に犯人となるように、その証拠を俺がいくつも用意していた事を。

ヒ素:猛毒の一種。摂取すると、呼吸困難、意識混濁などを起こして死ぬ。暗殺の道具として使われ、また遺産相続の為の手段として使われていたことから『相続の紛薬』、または『愚者の毒』の異名を持つ。

いや、殺さなきゃいけない奴がまだいたな。
......これを読んでいるお前だ。

END