HTF小話集と短編集！！そのⅤ (ページ23)

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ハロウィンのレクイエム 4 ページ23

乱れていた思考が、一気に正常に動き始めた。
そうだ、自分は彼女を愛していた。それは今でも変わらない。彼女も、何度も死んでは蘇る夫を愛してくれた。夫の仕事に敬意を持っていた。身体が弱くとも、いつも献身的に尽くし、笑顔をほとんど絶やさなかった妻。事ある毎に、愛していると言ってくれた。

ポップ「...君は『彼女』じゃない‼」

ポップは叫んだ。

ポップ「君は、私の後悔から生まれた、偽りの『彼女』だ‼私を愛してくれた彼女は、そんな事言わない‼どんな事があっても、彼女は僕を、何度も許してくれた‼」

子供を離さぬように抱き抱え、立ち上がった。それと同時に、まやかしの亡霊が怯み始めた。霧が徐々に離れていく。

ポップ「私とこの子から離れるんだ‼消えろ‼...私から生まれた『亡霊』‼」

今度は、ポップが体当たりした。それは窓から落ちる。声にならない叫び声を上げながら、空中に消え、霧が完全に消えた。

ポップ「はぁ...はぁ...!」

ディスコ「ポップ...!」

男は疲れ果て、膝から崩れ落ちた。赤子をあやしながら息を整える。

ディスコ「おい、大丈夫か...?」

心配そうに声をかける友人に、悲しみを含んだ笑顔で返す。

ポップ「何とか。...僕は、ずっと後悔していたんだ。普通の人なら、悲しみなんかを上手くコントロールして乗り越えようとするだろう...」

涼しい風が吹いてくる。

ポップ「でも、私は彼女の死は自分にあると...。自分の責任だとずっと後悔して...。最後はその闇に、取り憑かれてしまったんだ...」

涙があふれ出る。

ポップ「すまない...カブ。こんな目に遭わせてしまって...」

これで、悲しみと後悔が消えた訳ではない。いや、忘れてはいけないのだ。それに溺れてしまう方が、悲劇を生む。彼は自分の心の闇に取り憑かれ、子供諸共、無意味な心中をするところだった。

ディスコ「...本当にお人好しだな、相変わらず。そんなんだから、人様の本当の気持ちを見ようとしないんだよ」

ポップ「...」

ディスコ「ま、そんなお前なんだから奥さんは惹かれたんだろうし、俺だって、それが嫌に思ったことは1度もないからな」

ポップ「ディスコ君...」

空が白み始めていた。

ディスコ「早く出ようぜ、俺達不法侵入してんだから」

ポップ「そうだな...」

3人は、病室を出ようとした。