第3話 「ストレンジ・ラブ」 ページ13
-Aside-
多々良「2月20日15時20分」
ベンチに座って見る先にはワーワーと盛り上がりながら野球をしている吠舞羅のメンバーたち。
今は八田ちゃんが投げたボールをちょうど翔平がカンッと打ったところだ。
ついでにこの前の事件から本人希望のため翔平の事は呼び捨てになった。
隣でじーっと野球を見るアンナの頭を撫でながら華奈は横にいる千歳に目を向けた。
華奈「千歳?どうしたの。なんか疲れてない?」
華奈の言葉に反応した多々良がカメラを千歳の方に向けると、千歳は手でカメラのレンズを覆った。
千歳「十束さん、今やめて。もっとイケメン全開の時にして」
多々良「何かあったの?」
千歳「あー…まあ。モテる男は色々と……ね」
苦い顔でそういう千歳。
その時、私を膝に乗せてベンチに座っていた尊が私を下ろして立ち上がった。
どうやら次の打順は尊らしい。
『尊、次?』
尊「ああ」
『じゃあ、はいこれ。頑張ってねー尊!』
横に立てかけてあったバットを渡して応援の声をかけると、尊は打席に向かいながら後ろ手に手を振ってくれた。
それを見送ってから華奈の隣に行き座る。
多々良「あれ、次キングなの?」
『みたいだよ』
多々良の言葉に返事を返すと多々良はカメラを皆の方に向けた。
ちょうど尊が打席について準備をしている所で、後ろに審判としていた出雲は投手の八田ちゃんに声をかける。
出雲「八田ちゃん!尊来るで!!気ィ引きしめや!」
八田「お、おう!」
華奈「あれ、大丈夫なの?」
『さあ…』
気を引きしめる八田ちゃんを見ながら華奈が私に問い掛けてくる。
それに首を傾げた時、八田ちゃんは今までにないくらいのやる気を出して、私が渡したバットを構える尊を見据えた。
八田「悪ィがキングといえど、オレのストレートは」
八田ちゃんが全力で投げたボールは呆気なく尊に打たれてしまい、場外ホームランとなった。
尊や他の皆が「イエーイ」と言いながら次々と塁を周る中、八田ちゃんは意気消沈したように沈んでいる。
それに華奈が「あははは!」と爆笑していると、私はその隣で彼方へと消えたボールを目で追いながら目の前の柵に頬杖をついて苦笑した。
『…ダメだね。尊にはすごいハンデでもつけなきゃゲームにならないや』
その時。
アンナ「…その人、悲しかったんだね」
千歳「へ?」
アンナ「死なないでね」
カメラを野球に向ける多々良の膝の上に座っていたアンナは赤いビー玉を翳しながら千歳にそう言った。
45人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かなと - 違反だということを少しは意識して下さい (2019年7月24日 8時) (レス) id: 8e417a7b51 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年7月24日 8時) (レス) id: 8e417a7b51 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さきっち | 作成日時:2019年7月24日 8時