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思わず私と華奈が千歳を振り返ると、当の本人も「え…」と顔を引き攣らせていた。
その後ろから出羽が千歳に声をかける。
出羽「千歳!打順だぞ!」
千歳「待っ、アンナ?な、何それ」
出羽「さっさと打てよ」
出羽に連れ出された千歳はアンナにどういうことか問い掛けようとしたが、出羽に引っ張られて強制的に打席に立たされた。
それを見送って私と華奈はアンナに顔を向ける。
『アンナ、何かみたの?』
アンナ「女の人…」
華奈「『女…?』」
私と華奈の声が重なって顔を見合わせたその時、千歳が打ったボールが通行人の方へと飛んで行ったのが見えた。
八田「へっ、どこ打って…あ!!危ねえ!!」
ボールが向かった先にいた女性に気付いた八田ちゃんが声を上げた時、その女性はパシッとボールを片手で摑み取った。
「見つけた。千歳くん」
女性は微笑むと片手でグシャとボールを握りつぶした。
思わず私と華奈が「『え』」と声を上げると同時に千歳の顔がひくと引き攣る。
そしてその女性はそのまま握りつぶしたボールを私達のいる方へと投げてきて。
華奈「『はっ…』」
それはズバアアッと凄い音を立てながらネットを突き破っていった。
「わあああ」と悲鳴が上がるグラウンドを他所に私と華奈の間を高速で通っていったボールらしきものを振り返って、私と華奈と千歳は顔を青褪めさせる。
なにあれなにあれなにあれ。
最近の女性って力強いわけ?
てかなんで私と華奈の間を通った??
多々良「豪快だねぇー」
呑気に多々良は私達の横でカメラを回している。
それを耳にいれながら私と華奈は顔を見合わせるとありえない出来事に顔を引きつらせた。
なにあの女の人……怖いんだけど…。
多々良「千歳、どこ行くのー?」
多々良の声に我に返って横を向くと、千歳が青ざめた顔でダーーッとこの場から逃げ出していた。
あいつ…また何か女絡みで厄介ごと持ち込みやがったな。
華奈「多々良…」
多々良「しょうがないか」
カメラをしまった多々良を横目で見て華奈は呆然と成り行きを見ていた出羽を呼び寄せた。
『追うの?』
華奈「心配だし」
多々良「ちょっと行ってくるよ」
華奈「見つけたら電話するから、よろしくね」
『はーい』
私の方へと戻ってくる尊を視界の端に捉えながら、笑顔で華奈と多々良と出羽を見送った。
面倒事に巻き込まれたくないし、よかったよかった。
あんな女の人と対峙したら恐怖で逃げたくなるしね。
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かなと - 違反だということを少しは意識して下さい (2019年7月24日 8時) (レス) id: 8e417a7b51 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年7月24日 8時) (レス) id: 8e417a7b51 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきっち | 作成日時:2019年7月24日 8時