*453*こわれるおと ページ42
けたたましい音が鳴る。
ガチャーン、ガチャーン。
こわれるおと。
たくさんたくさん、こわれるおと。
「やめてッ、あなた!」
あ、さけんだ。
またさけんだ、あはは。
さけんだって変わらないのに。
逃げられないのに。
――…じゃあ、ちがうことをかんがえよう。
目の前のこわれるものとか。
耳にはいってくるさけびごえとか。
全部ぜんぶシャットアウトして、たのしいことを考えよう。
目を閉じたら全部あった。
ものが壊れていない綺麗な家も、お母さんの笑顔も、お父さんの大きな頼もしい背中も。
お姉ちゃんも楽しそうで、俺も声をあげて笑っていた。
楽しいね、お姉ちゃん。
お母さん、そんなに笑ったら気にしてたシワ、また増えちゃうよ。
いつも働いてくれてありがとうお父さん、だいすき。
楽しいことを考えればいい。
そしたら笑える。
お母さんにも心配をかけなくて済む。
お姉ちゃんも思い悩まなくて済む。
だから笑おう。目を閉じよう。
ここは俺のいる世界じゃない。
俺は、きっともっと違う場所で幸せに暮らしているんだ。
これは夢だから。
だから、だいじょうぶ。
*
俺…アンダーバーが中学1年生の頃。
5歳年上の姉が、出ていった。
姉は優秀だった。
その能力をいかすために県外に出ると言っていたが、実際は違った。
―――…姉は、耐えられなかったのだ。じぶんの家に。両親に。
俺の父親は、いわゆるDV夫だった。
母は優しかった。
そして、弱かった。
そう、かなしいほどに弱かったのだ。
*
「ごめんね、あおば」
「おねえちゃん…?」
「でも、お姉ちゃんもう無理。…元気でね」
記憶に焼き付いたお姉ちゃんは申し訳なさそうに笑っていた。
その表情が、「逃げるおとな」のそれだったことに気づいたときには、俺は中学生になっていた。
自分がやけに冷めているのは知っていた。
同級生が笑うところで、笑えない。
家でテレビを見ることができないから、話題にもついていけない。
適当に笑っていれば友達はできた。
けれど、“親友”は、できなかった。
遊ぶような余裕は無く、家で勉強をしていた。
うるさいがなり声も。
何かがこわれる音も。
女の人の泣き声も。
全部聞こえないようにして。ただただ、勉強をした。
幸いそのおかげで成績はあがった。
勉強をしている間は、雑音は聞こえなくなった。
――…そんな、中学1年生の秋。
*
(アンダーバー本名:安藤蒼葉)
358人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
水鎖。 - シェアハウスずっと読んでます…!!ストーリーや時間軸がちゃんとしてて読みやすいし、何よりキャラクターの個性がそれぞれ萌えて面白いですっ!!アイコンなんですが、Twitterアイコンに利用させてもらってもよろしいでしょうか…!? (2015年2月1日 22時) (レス) id: 9c55b788b9 (このIDを非表示/違反報告)
BELL - HQの同人誌<黒研>なら4冊持ってます。及川攻めなら2冊出てますよ♪ (2015年1月12日 16時) (レス) id: 70d416ebac (このIDを非表示/違反報告)
青空バード - わー、終わってほしくないです… (2014年12月7日 17時) (レス) id: 37a6055bcc (このIDを非表示/違反報告)
水滴(プロフ) - べっ別にむしろ15までいってほしいとかそんなことめっちゃ思ってるんだからね!() (2014年12月6日 22時) (レス) id: 203b1aa01e (このIDを非表示/違反報告)
白猫ナル@月山(プロフ) - さやえんどうさん» レスありがとうございまーす!数学のテスト死にました!←無理はしてないですよー!明日献上できたら献上しに来ますね!もう少し遅れるかもしれませんが… (2014年12月6日 20時) (レス) id: 4f80e5a98d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ