*449*勝手にしろ ページ36
*しゃむおんside*
僕は、おずおずと訊ねる。
「でも、あの…どうして、今まで」
その問いに、母さんは切なげに微笑む。
「私たちは当時売り出し中の女優と、お堅い弁護士。…しかも貴方を産んでからすぐに、私が注目されてきたの。
スタイルも元に戻ったから、私たちは話し合った。…どう頑張っても結婚はできないって、そのとき悟ったわ」
けれど、それを遮る声があった。
「…莉那、もういい」
低い声で制止をかけたのは父さんだった。
…父さんのこんな顔、はじめて見た。
「衛さん、でも」
「俺が話す」
父さんは僕をしっかり見る。
「…彩夢。お前には悪いことをしたと思ってる。名字も違うものを名乗らせて、…しかも誘拐まがいのことを、して」
「父さん…」
「すまない。…必死だったんだ。今莉那と話して分かった。俺がしていたことは、間違っていた。もっとはやくこうしていれば…」
「…父さん、…いいんだ。だって、僕はこの人生でよかったと思ってるから。…僕はこの時間をすごせてよかったと、思えるから」
頷くと、父さんは俯いた。
父さんが冷静でなくなるときを、はじめて見た。
母さんが微笑む。
「…優しい子に育ったのね、彩夢。…すごく優しい子に育ったわ。
ところで、ここまでつれてきたのは貴方のお友達なの?シェアハウスをしているんですってね」
「あ…うん」
「愉快なお友達ね」
クスクス笑う母さんの隣で、父さんが苦い顔をする。
…何かあったのだろうか。あとでアンさんに詳しく聞いておこう。
―…そうだ、シェアハウス。
僕は深呼吸をした。
「…父さん、母さん。僕は、みんなとまだシェアハウスにいたい。
…でも、今まで育ててくれた父さんに迷惑をかけたくないんだ。勿論、母さんにも。…僕がいることで迷惑がかかるなら、本当になかったことにしてくれて構わない。
…だけど、シェアハウスだけは」
「もういい」
「…え、」
父さんが僕の言葉を遮った。
彼は眉間にしわを寄せてため息をつく。
「…勝手にしろ。友人関係はしっかりするように」
「父さん…!」
目がじわりと熱くなる。
ごしごし目元を擦っていると、母さんが笑った。
「貴方の人生よ、好きに生きなさいな。それに、歌上手じゃない」
「え…!なんで!」
「あら?衛さんに教えてもらったわ、“歌が上手い”って興奮気味に」
慌てて父さんを見ると、わざとらしい咳払い。
思わずクスクス笑うと、それは母さんにも伝染した。
空間を、カモミールティーの湯気が包んだ。
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水鎖。 - シェアハウスずっと読んでます…!!ストーリーや時間軸がちゃんとしてて読みやすいし、何よりキャラクターの個性がそれぞれ萌えて面白いですっ!!アイコンなんですが、Twitterアイコンに利用させてもらってもよろしいでしょうか…!? (2015年2月1日 22時) (レス) id: 9c55b788b9 (このIDを非表示/違反報告)
BELL - HQの同人誌<黒研>なら4冊持ってます。及川攻めなら2冊出てますよ♪ (2015年1月12日 16時) (レス) id: 70d416ebac (このIDを非表示/違反報告)
青空バード - わー、終わってほしくないです… (2014年12月7日 17時) (レス) id: 37a6055bcc (このIDを非表示/違反報告)
水滴(プロフ) - べっ別にむしろ15までいってほしいとかそんなことめっちゃ思ってるんだからね!() (2014年12月6日 22時) (レス) id: 203b1aa01e (このIDを非表示/違反報告)
白猫ナル@月山(プロフ) - さやえんどうさん» レスありがとうございまーす!数学のテスト死にました!←無理はしてないですよー!明日献上できたら献上しに来ますね!もう少し遅れるかもしれませんが… (2014年12月6日 20時) (レス) id: 4f80e5a98d (このIDを非表示/違反報告)
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