*440*しゃむおんの部屋 ページ27
『…ってわけなの。もうすぐ店長とまふくん、96ちゃんが来ると思…
…ううん、絶対来る』
私は、目の前のしゃむくんにそう語りかける。
目を赤くしたしゃむくん。
元気だった姿が嘘じゃないかと思うほど、くらい表情のしゃむくん。
目に見えて狼狽している。
こんなところにいていいはずがない。
だって、気づいたから。
警備員が巡回していたのも、階段の前にいたのも。
3階の窓のカーテンが閉まったのも、しゃむくんを閉じ込めておくためだって気づいてしまったから。
もし、しゃむくんがお父さんと幸せに暮らしているなら、これっきりでもいいと思っていた。
悲しくても、つらくても、我慢しようって。
不幸な境遇でもいつも笑っていたしゃむくんが幸せになれるように、全力を尽くそうって。
――…でも。
『しゃむくん、私、辛い顔してる友達放ってほけるほど無神経じゃない』
「辛い顔、なんか」
『してる。しゃむくん、すっごい辛そうな顔してるよ』
私がそう言うと、しゃむくんは顔を歪めた。
そして、小さな声で「僕なんかのために何で」と呟く。
その言葉に、カッと目頭が熱くなった。
『ばか、なんでわかんないの!!』
思わずあげた声に、しゃむくんはびくっと肩をはねさせて私を見る。
じわ、視界が滲むのを感じながら声をあげた。
『しゃむくんは自分のこと軽んじすぎだよ。私たち、しゃむくんのことすっごい大事に思ってる、すっごいすっごい大好きだって思ってる!ッ、いきなりいなくなったら悲しいし、寂しい!
っ…わかってよ…!』
ああ、涙がこぼれそうだ。
私は目元をごしごしと擦る。
私が泣いちゃいけないのだ。しゃむくんをろんさんのカフェに連れて行くまで。
頼まれたことをやり遂げるまで、泣けないのだ。
「A…」
しゃむくんが目を潤ませて手をのばす。
その手は、しっかりと私の手を握った。
「…あとで、ゆっくり父さんと話させてくれる?」
『っ、うん、アンさんに頼めば、きっと』
「僕を連れ出してって言ったのはきっとアンさんか灯油さんか天月くんだよね。この後の目的もあるんでしょ?」
さっきとは打って変わったしっかりした口調に、私はこくこくと何度も頷く。
しゃくりあげそうになるのを堪えて、私もしっかりした口調で話すように心がけて。
『うん、ろんさんのカフェにしゃむくん連れてこいって、言われてる』
「ろんさんの…?なんでまた、」
しゃむくんが首を傾げたところで、扉が開いた。
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水鎖。 - シェアハウスずっと読んでます…!!ストーリーや時間軸がちゃんとしてて読みやすいし、何よりキャラクターの個性がそれぞれ萌えて面白いですっ!!アイコンなんですが、Twitterアイコンに利用させてもらってもよろしいでしょうか…!? (2015年2月1日 22時) (レス) id: 9c55b788b9 (このIDを非表示/違反報告)
BELL - HQの同人誌<黒研>なら4冊持ってます。及川攻めなら2冊出てますよ♪ (2015年1月12日 16時) (レス) id: 70d416ebac (このIDを非表示/違反報告)
青空バード - わー、終わってほしくないです… (2014年12月7日 17時) (レス) id: 37a6055bcc (このIDを非表示/違反報告)
水滴(プロフ) - べっ別にむしろ15までいってほしいとかそんなことめっちゃ思ってるんだからね!() (2014年12月6日 22時) (レス) id: 203b1aa01e (このIDを非表示/違反報告)
白猫ナル@月山(プロフ) - さやえんどうさん» レスありがとうございまーす!数学のテスト死にました!←無理はしてないですよー!明日献上できたら献上しに来ますね!もう少し遅れるかもしれませんが… (2014年12月6日 20時) (レス) id: 4f80e5a98d (このIDを非表示/違反報告)
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