【歌い手】シェアハウスでの日常。season13

＊４３１＊行動開始 ページ17

恐る恐る中に入ると、アンさんが灯油さんに怒られていた。ざまみろ。
すると、階段をおりてきた天月くんがさわやかに微笑む。


「あ、おかえりA。今からA達、しゃむくん取り返すために弁護士の四之宮衛さんのおうちにお邪魔するらしいから、“派手すぎなくて動きやすい服に”着替えてね」
『お、お邪魔するのにどうして動きやすい服に…？』

い、嫌な予感が、する。
私はゆっくりと聞いた。

天月くんは、可愛らしく小首を傾げて笑みを深くする。


「んー…“おうちにお邪魔”、別名―…
―…不法侵入？」
『ふっ…！？』

言葉を失う私の横を、たったかたーとおそろいのジャージを着た96ちゃんと店長がかけていく。
二人の顔はわくわくと輝いていた。

「A〜っ、はやく準備して！私も店長もわくわくしちゃって！」
「まさか合法的に不法侵入ができるなんて思ってなかったよね〜！」
「いや店長全然合法的じゃないけどね！」
「「あははははは！！」」


怖い。
隣のまふくんが、そっと囁いた。


「四之宮邸に侵入するのは、俺と、Aと、96ちゃんと店長。迅速にしゃむくんを連れ出して、ろんさんのカフェにつれてく」
『えっと…やっぱ、不法侵入、なの…？』
「はは…見つかったら、拳骨じゃすまないだろうね…」


まふくんの顔も青ざめている。当たり前だ。
私がバイトに行ってる間に何があったんだ。

すると、灯油さんが手でその場の騒がしさを制して話し出す。


「じゃあ、Aも帰ってきたことだしもう一度確認する。しゃむおんを連れ出しに四之宮邸に侵入するのが、店長、96猫、まふまふ、A。…くれぐれも用心しろ、何かあったら直ぐに連絡。あと、何があっても絶対にバラバラにはなるな。
二組目。四之宮衛―…しゃむおんの父親だな―…を連れ出すのが、アンと天月、それと俺。…まあ、なんとかなるだろう。
三組目。今しゃむおんの母親―…女優の、芳賀崎莉那を連れ出すのは、俺たちじゃない。赤飯さん、ぽこたさん、ユリカさん、ちょまいよさんに頼んでいる。多分もう向かってるんじゃないか。

作戦としては滅茶苦茶かもしれない、一人ひとりを連れ出すなんて無理かもしれない。リスクも大きくなる。
…けれど、賭ける価値はあると、俺は思う」


一人ひとりの顔を見て、灯油さんは言う。
私たちは、そっと黙って話を聞く。


「最終的に、ろんさんのカフェで合流だ。―…異論、質問は」



全員が静かに首を振り、行動を開始した。

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