*389*気になりますか ページ14
そこで、今まで怖くて見れていなかったびすさんのほうを見る。
目が合った。
…それと同時に、深いため息をつくびすさん。
…やっぱ嫌、だよね。
びすさんは、ぼそりと「帰りたい」と呟いた。
ひい、相当嫌がってる。
戦慄する私をチラリと見ると、びすさんは言った。
「Aさん」
『っは、はい!』
びくりと肩を震わせた。
何か言われるだろうか。やばいかな。
けれど、罵倒の言葉は振ってこなかった。
「はやくここ出ましょう。壁伝いに進んでいけば出れるはずです」
『は、…い』
あまりにもあっさりしている。
けれど、決定的に違うことがある。
びすさんが、一度も目を合わせてこない。
さっき、偶然合ってしまって以来、一度も。
確かに、前から人の目をじっと見て話すタチではないようだったが、ここまで見ないことはなかった。
…やっぱり、この前の朝のことは水に流れていないらしい。
当たり前か。
静かに歩き出すびすさんの後ろをついて行った。
…けれど、気まずい。
こんなに沈黙が気まずいことがあっただろうか。あ、シェアハウスに来たばかりのときのまふくんとの沈黙は辛かったような。
静かに草を踏みしめる音と、学園祭の騒がしさが遠くで聞こえる以外は何も聞こえない。
中庭は広い。
真ん中に噴水、そして移動可能なベンチがいくつか。
それ以外はフリースペースで、だだっ広い。
そこいっぱいに迷路を作ったのだから、そりゃ広いに決まっている。
出られるのだろうか、そんな不安が胸中を掠めた。
―…でもまあ、そんな不安より、今は目下この状況が問題なのであって。
意を決して、口火を切った。
『あ、ああの、びすさん、この前の朝はすみませんでした!』
「…いえ、こちらこそ」
うわ、会話終了。
頑張って浮かべた笑顔も凍りついた。
ひいぃ、ここからどうやって会話を続ければいいんだ。
しかし、会話の続きを切り出したのは意外なことにびすさんだった。
しかも、思いもよらない切り口で。
「…気になりますか、この前の俺の、言葉」
『…ことば、って、』
「…、“すごいですよね、真実なんて針金みたいに簡単に捻じ曲げられちゃうんですよ”」
びすさんは、そう言った。
そう、あの日の朝と同じような、嘲笑するような声色までご丁寧に再現して。
私は、おずおずとうなづく。
びすさんは、目を伏せてから、言った。
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はる(プロフ) - 受験生ですがいつもニタニタしながら読ませてもらってます!いやー、後夜祭幸せですうふ。更新頑張ってください!応援してます! (2014年12月30日 0時) (レス) id: b5e628d4b6 (このIDを非表示/違反報告)
小夜 - 昨日今日で1話から全部読ませていただきました!すごく面白いです!!まふくんあざと可愛い//嫁にしたいww更新頑張って下さい!楽しみにしてます!!! (2014年8月8日 17時) (レス) id: ac3cfb6034 (このIDを非表示/違反報告)
夢羽(プロフ) - ありがとーございます!ですよね?灯油さんターンになったけど、天月くんどうなったのかな?とか思いました笑わっかりました!今から行きます。ちょっと待っててください。あ、タメでいいですよ同い年なので笑 (2014年8月6日 20時) (レス) id: fd10587820 (このIDを非表示/違反報告)
さやえんどう(プロフ) - 夢羽さん» うわああああフラグ回収忘れてるうわあああああうわああああうわあああry すみません取り乱しました…。た、多分、「一体誰に会ってたの?」だったと思います!多分!すみません! 友希は申請してくださればどんどんオッケーします! (2014年8月6日 17時) (レス) id: 6ce064ce99 (このIDを非表示/違反報告)
夢羽(プロフ) - 初コメしたくせにうん、ずうずうしいですね。ごめんなさい。友希してもいいですかー?とか思っちゃったり、、、 そして、あの、海のところで天月くんが夢主に言った「***」は、なんだったのかなー、みたいな、、ところどころのフラグ回収忘れてますよね?(ゲス顔) (2014年8月6日 11時) (レス) id: 964f2375d3 (このIDを非表示/違反報告)
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