16日目 ページ16
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薬品の香りがする。周りをぐるりと囲う白いカーテン、ここは
医務室……?
(………あれ、私)
ツキリと頭に痛みが走った。
(呪霊を祓ってて、それで…)
今日は後輩の七海と任務へ向かった。低級だけど数の多いそれらの相手を二人でして、全部祓い終えたAがお疲れさま、そう声をかけた時に七海の『危ないッ』って声が聞こえて
そこで漸くAは自分が任務先でヘマをしたのだとわかった。
(ぁー…やってしまった……)
まだ重たい瞼を閉じ、溜息をついた時だった。
『気がついた…?』
「……ッッ!」
『具合はどう』
七海くんじゃない、硝子でもない、
ここにいるはずの無い人。けど聞き間違うなんてない耳障りのいい優しいテノールの正体は……
動きづらい身体で目線だけで声の主を探す。
(……な、んで)
『どうしているの、って顔しているね』
「……」
『理由が聞きたいのはわたしのほうだ』
夏油の優しかった声色が突如、低く、鋭いものへ変わった。
初めて自分に吐き捨てられた抑揚のない声。
『きみの体調が悪そうだからと灰原が任務を変わってくれるように言ってくれたそうじゃないか』
「ぁ…」
『なのに大丈夫と申し出を無視して。任務へ行って挙げ句背後を取られて。七海があと一瞬遅れてたら今頃きみ、死んでたよ』
「………」
『先輩だからといい格好しようとした?けど結局はこうして皆に心配をかけて。……きみは一体何がしたいんだ』
そんなの自分が一番わかっていた。
夏油が言っているのは紛れもない正論。何ひとつ言い返すことが出来ないくらい、それらの言葉はAの胸を大きく抉る。
情けなくて、悔しくて。それ以外にも_
ゆるゆる浮かぶ涙を見られたくなくて顔を背けた、
瞬間、
どす、と顔のすぐ横に降っておりた拳。
くっきりと浮き上がる血管に、Aは全身の血の気が引いた。
(ぇ、……ぇ?)
夏油が片足を乗り上げると骨組みだけの簡素なベッドは歪な音を立てた。びくっと固まったAの顎を掴み上を向かせれば夏油の冷ややかな視線と強制的に絡み合う。
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すみっことかげ(プロフ) - ココナッツさん» 表情は、意識しすぎるあまり同じ顔になりながら書いていることに最近気づきました。笑 更新を楽しみにしてくれてる人がいることが励みです♡続編も頑張ります〜! (2022年10月19日 19時) (レス) id: 836ec41816 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - すみっことかげさん» わわわっお返事頂いてるの気付くの遅れてしまったぁぁ…そして続きをありがとうございます!!夏油さんの表情の変化←すみっことかげ様の言葉遣いが上手すぎていつも惹き込まれてます笑 そうしましょう(うん?) (2022年10月19日 17時) (レス) @page49 id: a1f85287cc (このIDを非表示/違反報告)
すみっことかげ(プロフ) - ココナッツさん» 秒レス失礼します!進行形で書いてます。笑 残された夏油くんは今何を思うのか…。わしらモブも木の陰から見守りやしょうぜ(え) (2022年10月18日 12時) (レス) @page48 id: 836ec41816 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - さ…最終話……??はぅ…寂しい気持ちがありますけど最後まで夏油さんと夢主ちゃんの行く末を見守らせていただきます…!!!(どこから目線…すみません🙇🏻) (2022年10月18日 12時) (レス) @page48 id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - すみっことかげさん» 夢主ちゃんがぎゅっとされてるところを偶然見かけてしまって、見てるのがバレて夏油くんに(この子は私のだよ)って感じで独占欲?剥き出しにされて、ひぇってなるモブになりたいです(え←) (2022年10月11日 9時) (レス) id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみっことかげ | 作成日時:2022年7月28日 16時