22話 ページ22
『秋ちゃーん…ってあれ、塔子ちゃんとリカちゃんだ』
「あっ一青!!久しぶり〜!」
密かに練習を始めてから1時間。秋に用があり食堂にやってきた水城は、久しい顔が二つもあったことに目を丸くする。
「どうしたの?一青さん」
『あ、タオルが置いてある場所を教えてほしいんだけど…』
「タオル?ならちょうど今から行くつもりだったから持ってくるね。何枚欲しい?」
『あー、2枚かな。ありがとう秋ちゃん』
「んーん、これもマネージャーの仕事だもの!」
用件を言うと嫌な顔一つせず応じ食堂から出ていった秋に感謝をしながら見送った水城。そして塔子とリカに向き直ると、すぐさま塔子に抱き着かれた。
「一青日本代表入りおめでとう〜!!あたし一青が選ばれてるって知った瞬間思わず叫んじゃったよ〜!!」
「ウチら大阪ギャルズもめっちゃ応援しとるからな!中途半端なプレーしたら許さへんで!!」
『ありがとう塔子ちゃん、リカちゃん。もちろん頑張るよ』
塔子の背中に腕を回し熱い抱擁に応える水城を見てコアラの親子か、とリカは心の中で突っ込む。もちろん親が水城で子が塔子だ。
『2人はどうしてここに?』
「陣中見舞い!焼き菓子持ってきたから食べてくれよ!」
「あっそや!あんたらの監督にウチがガツンと言ったったからな!」
「だからどこが…?」
塔子とリカは今から30分ほど前にここに来た。だが雷門中に足を踏み入れると正面のグラウンドには誰もおらず、合宿所の玄関の掃除をしていた秋に招き入れられその理由を聞いたらしい。
本当に大丈夫な監督なのかと心配し、椅子に座り見張りをする久遠のもとにリカが苦情を入れようとするも、久遠の静かに鋭く刺さる眼力に負けてそそくさと秋と塔子のいる食堂に戻っていったのはつい15分ほど前のことである。
「一青さん、はいタオル!」
『あっありがとう秋ちゃん。じゃあ塔子ちゃんにリカちゃん、またね』
「応援しとるからなー!」
しばらく世間話をしていると食堂に戻ってきた秋。本来の目的を果たした水城は部屋に戻ると言うので、3人は手を振りながら水城を見送るのだった。
「?どうしたん塔子?」
「いや…一青、なんか前より痩せた…?」
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作者名：不二市
| 作成日時：2018年7月6日 15時
