夕風と見る遠くの複数の灯火たち ページ10
気が付くと、魈がいた。ウェンティが訪れる前に遊びに来るなんてすごく久しいなと思う間、彼は口を開けた。
「お前に会いたいと仰る方がいる、ついて来て欲しい」
やけに尊敬している口調で言われる。長い付き合いの数少ない友達の誘いを受け、ついて行くことにした。結構速く、追い付けなくて時々こけた。わたしの神の目の機能は、走ることに特化していないから何度も魈が止まった。それで着いたのは約10分程だった。彼だけなら一瞬だったろうけど、こっちから見てなかなか遠いのと空を飛べないので羨ましい。
そんなこんなで彼と共に向かった先は、人が住まう場所から少し離れた人気が一切無い場所だった。そこで、角のような物を頭から生やしている水色の髪の女性と、高身長なこげ茶色の髪の男性が会話している様子が見えた。趙は彼らに近付き、一声かけていた。
「……ん？ああ、彼女か。会ってみたいと思っていたが、会えるとは良い日だ」
「わっ、もしかして雪山の龍ですか？会ってみたかったんです！」
「今日は騒がしいが、お前は平気か？」
お互いに自己紹介をしたが、この高身長な男性が鍾離で女性の方が甘雨というらしい。しかも、魈も甘雨も鍾離に対して、すっごい丁寧な態度で接しているので結構なお偉いさんかなと思いながらぼんやり眺めていた。
そして魈に近付き、鍾離がどういう人なのか訊ねてみる。
「……何度も鍾離様の話はしていたが、覚えていないのか」
「魈、彼女を責めるな。何百年も雪山に籠っているのだろう、知らなくてもおかしくはない」
「帝君は璃月の神様です、いわゆる岩神様です」
すごく体型が良くて、なかなか体のあれこれが成長しないので羨ましい。背丈も彼女の方が少し高いし、胸も大きいし、何より両親のどちらかの血の証がちゃんと頭にあるのが何よりとても羨ましい。わたしにはもうないから、折られてしまったから。
「あ、あの……私の頭、変でしょうか？」
「いや、角が生えているだけだが。Aは甘雨も似たような血筋だ、身構えなくとも大丈夫だろう。少々気難しい魈が良く話す存在は、なかなかいない故にお墨付きだ」
「そ、そうですよね！Aさん、実は私も半分人間の血が入っているんです。同じお仲間が増えて嬉しいです！」
自分以外の混血の存在に初めて会ったのでびっくりした。そしてまだ言っていないことをぽんぽん言われたので、もしかして魈を伝って話を聞いたのかと思った。でも、夕日の中でも素敵な人と出会えたから良いかな。
夕山風と埋まらない穏やかさ→←知らないモノが飄風として襲い掛かるから
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