唐突に吹き込む隙間風に戸惑う ページ8
雪がやまない日が無いと言われるドラゴンスパインでうろうろする。今日の食料調達をしているが、ファデュイという悪者たちも時々うろうろしているので、見つからないようにしていた。
「なるほど、龍はここにいたのか」
雪に塗れたラズベリーを手にしていると、急に後ろから声が聞こえた。驚いて男声へ顔を向けると、大きな笠を頭に被った青い髪と瞳をした少年がこっちを見ていた。おかしい、この土地に来る人間の吐息は白く映るのに彼の口元にはその息が見えない。もしかして、人じゃないモノなのかと思って身構える。
「そこまで身構えなくとも、僕は君を傷付けようと思ってはいない。だってファデュイはもうとっくの前に抜けたし」
彼はさぞ興味なさげに周辺を見回す。
一面銀世界と言ったら聞こえは良いが、実態はただの雪山。テイワットでは結構珍しい部類に入るが、好き好んで入る人はなかなかいない。稀有に冒険や興味だけで雪山に登る人間はいるが、9割方は遭難している。だからその度に、彼等を担いで麓まで連れて行く。雪山に死骸は欲しくないので、我ながら面倒なことをしている。
そんなことをぼやぼや思っていると、突然後ろからぬっと白と緑色の布地に包まれた腕が伸びて来た。
「ボクの大事な人を困らせないで、お人形さん？」
「心を奪われたままの風神か。その龍の方に別の意味で心を奪われ、相当入れ込んでいるみたいだね。二つの意味でとても愚かじゃないか」
嘲笑う笠の少年に対し、ウェンティはわたしの後ろから抱き着いたままで威嚇した。何故わたしを挟んでするのかが分からない。
「別に良いよ。全部本当だからさ、お人形さん？」
「……さっきから僕を"お人形さん"と呼んでるけど、やめてくれないかい？放浪者と周りにも言われているんだ。まあ、酒飲みでだらしのない風神の君には関係無いか」
「そうだね、関係無いね。神の目は与えたけど、それ以上先は知らないね」
よく見たら、彼の体には神の目がぶら下がっていた。しかもわたしたちと同じ色をしている。何でわたしの周りには同じ色の神の目を持つ存在がやって来るのだろうか。
「これ以上、ちょっかいをかけないで。ボクの大事な人だから、困らせたり傷付けたりしたら容赦はしないよ。これでも神様なんだから、罰を与えることだってできるんだ」
急に後ろから真剣な声が聞こえた。その声が肌に触れた瞬間、びりびり震える感覚がした。神の威嚇の程に威厳が溢れた。
「ふうん、そうかぁ。良いこと聞いた」
知らないモノが飄風として襲い掛かるから→←恒風じゃないと落ち着かないんだ
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