検索窓
今日:8 hit、昨日:11 hit、合計:11,091 hit

恒風じゃないと落ち着かないんだ ページ7

夜の重い心身を引きずりながら歩いていると、前からいつもの微風がふわりと自分の前から舞って来た。それにつられて顔を上げると、片手を上げているウェンティが見えた。

「ゴメンね、結局1人にさせちゃって……これからは、ボクと君しかいないであろう場所に連れて行くから」

少し心細くて、彼に手を握られ連れられるままにモンドの高所で崖っぷちの星拾いの崖へと向かっていた。セシリアの花が咲いて、夜風に背丈の短い草と共に揺れていた。

「ここかな、ボクの好きな花も咲いている場所だよ。君がさっきから大事そうに抱える良い匂いのする袋の中身を、一緒に食べよっか?月見で一杯できないのが非常に残念だけど……まっ、Aと2人だけだから無問題だね」

さっきまでアカツキワイナリーの酒場にいたが、もう居心地が悪すぎて帰りたいと何度も思っていた。その時にオーナーのディルックに、テイクアウトを頼んだら構わないと言われた。だから、2人分の料理を買ってさっさと出た。
何で2人分買ったんだと思い、横でテイクアウトしたムーンパイを頬張る昔馴染みの存在を見詰める。丁度ムーンパイを全て食べ終えた様子で、ふと目が合う。

「ん?ボクをじいっと熱烈に見てるけど、まさか見惚れちゃった?えへへ、恥ずかしいな」

ちょっと茶化すように言われて、それはないと即答で断言した。すると、むくーっと膨れた。

「せっかくのムードをAに壊されちゃったな……あーあ、どうしよっかな」

蒼と翠が混じった瞳で、少し期待している様な眼差しで見る。こっちにアクションを求めるようで、少しうざったいので自分のムーンパイを頬張る。さくさくに焼かれた生地の中に、漬けられて程々に柔らかく同じく焼かれた肉もその汁が堪らなく美味しい。思わず緩む頬を押さえていると、真横に真ん丸な眼差しがちらりと映り込む。

「ふふふ、可愛い顔を見付けた。だから、その顔をいっぱい見せたら許してあげる」

わたしの頬に手の平を這わせる。そのまま彼の方に向けられ、端正な顔立ちの少年と目が合う。真ん丸の瞳を細め、やや嬉しそうな口元を作る。

「やっぱり君には笑ってて欲しい。昔は泣き虫だったけど、今は色んな愛くるしい表情をいっぱい見せてくれてとっても嬉しいんだ。だけど、笑顔が1番。だから、できればずっとその顔を見せて欲しいな……他の誰でもない、Aに頼むんだ」

多分、わたしも笑顔を作る理由が欲しかったのかもしれない。だから、ウェンティに向かって頷いた。

唐突に吹き込む隙間風に戸惑う→←枯れた心に現る強風



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (26 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
23人がお気に入り
設定タグ:原神 , 夢小説 , ウェンティ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:さとうみさん | 作者ホームページ:http  
作成日時:2023年4月25日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。