常時に煽風を受けている ページ5
「ここは璃月のパワースポット。これが稲妻の綺麗な櫻がたくさん見れる場所、これがスメールの森林浴ができる場所!それにそれに―――」
急にテイワット中のあれこれを見せつけられている。観光ブックを持ったり彼のメモ用紙を見せられたり、意味が分からない。先日を思い出すと、確かにそうかもしれないけども。見るのがバカらしく、メモ用紙と観光ブックを突き返す。そして、焚火を作って暖を取る。ウェンティに抱きつかれないようにしているけども、横の人物は明らかに不機嫌オーラを出していた。
「むーっ、どうして無視するの……ボクを見て欲しいけどさ、今はそうしてって訳じゃないよ。どこか行きたい場所を教えて欲しいだけだよ」
わたしの腕を軽く掴んで、ぶんぶん振られる。そのせいで体がすごく揺れて、目が回る。別に好きで行っている訳じゃない、美味しい物を食べに行っているだけだから。旅がしたいって訳じゃない。
「ここから出る時はご飯を食べに行く時だね。綺麗な景色じゃ、お腹が膨れない……稲妻で美味しいお店がたくさんあるらしいから行こう!最近、稲妻が入国を許しているらしいからさ」
あの島国に行くのは抵抗がある。過去に上陸したことがあったが、その途端に体中がびりびりする感覚がして痛かった。比喩でもなく、本当に体がびりびりした。
それを伝えると腕組みをして悩む表情をしたが、続けて「今は大分丸くなったから、そんなことはないよ。多分」と言った。その不確定要素が怖いんだけども。
「でも、大事なAを傷付けるなら闘うよ。でも、七神の中だと最弱だからやられちゃうな……えへへ」
苦笑に近い状態で答えていたが、どうして龍と人間の混血のわたしに力を貸すと言い切れるのか。神様に依怙贔屓されるようなことは、何一つもない。強いて言うなら、昔からの腐れ縁というだけ。
少し驚いたわたしの表情を察してか、今度はいつもの眩い笑顔を作って答えた。
「疑問の表情だね?そっか、ボクが君を大事にする理由を知りたいんだね」
急にわたしの前に来て、両頬に彼のきめ細かい両手がそれぞれ添えられる。顔が近く、端正な顔立ちがある位置で止まる。
「条件付きだけど、聞きたい?」
少年から蠱惑的な雰囲気が滲み出て、ぶんぶんと大きく首を横に振る。熱くなっている顔を諸に見られて、すごく恥ずかしい。彼はくすくす笑いながら離れた。
「やっぱりAはからかいがいがあるよ」
こいつを捻り潰した方が世界平和になると思い始めてきた。
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